鳩は八文鴫四文 |
ある日、鳩と鴫とが銭を拾って「俺が拾ったんだ」
「いや俺が拾ったんだ」と喧嘩して居った。
其処へ蟻が来て
「お前達何を喧嘩しとるんだ」といって仲へ入った。
鳩が
「今此所で俺が銭を拾ったら鴫の奴めが.俺が拾ったんだと云って取らっとするで、これは俺
の物だと云って居る所よ」と答えた。
すると鴫も負けずに
「嘘だ、俺が拾ったんだ」と云う。
蟻がそれをなだめて、
「まアお前達静にしとれ、俺がどっちへも無理の無い様に分けてやるに」と云って、
「どうだ俺に任せるか」と念を押した。
鳩と鴫とは「それじゃあお前に任せる」と云うと、
蟻は
「鳩は八文 鴫四文」と云いながら、鳩へは八文、鴫へは四文渡して置いて
「あとはありったけ蟻の物よ」と云って、沢山残ったのを皆自分の懐へ入れてしまった。