餅と和尚と三人のお小僧 |
昔あるお寺に、和尚様と三人のお小僧が住んで居った。
ある日和尚様はお隣へ餅のお客に呼ばれて、さんざ御馳走になった上、
お餅を三切れお土産に貰って帰って来て、それを棚の上に載せて置くと、
三人のお小僧はそれを見てけなるがって、ちょうきゅうにお経も読めなんだ。
そこで和尚様はお小僧に
「お前たちの中でリンと云う字を一ばん沢山入れた歌を詠んだ者に
此のお餅をやらず」と云った。
そうすると一人のお小僧がさっそく
「錆びたりや錆びたりや赤いわし 麦飯に添えて食ったら腹はぽてリン」
と歌った。
「ウン此りゃあうまい」と和尚様はそのお小僧に一つやった。
すると又一人のお小僧が
「リンリンと背戸に咲いたる桜花 一枝折れば花は散リリン」と歌った。
「ウン此りゃあ仲々うまいぞ」と又一つやった。
そうするといちばん終のお小僧が
「リンリンと腰に差したる小脇差一振り振れば首は落ちリン」
と歌ったので、和尚様は
「ウン此れも上手だ」と云って又一つやったら、
あとは空っぽになってしまった。
それで和尚様は仕方がなく
「善哉や是非ない事を云い出して 餅を食われてこれで困リン」
と云って頭を掻いたって。