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昔、人は春から秋は田畑を耕し、秋の終わりより冬の期間は粘土をこね窯を焚いたと、何かの書物で読んだことがあります。

私は若い頃より、人が平安の昔より営んできた「半農半陶」の生活に憧れてきました。

私は現在、農の仕事はしていませんが、臨済宗妙心寺派 常信院(じょうしんいん)という禅寺の住職をしています。寺の仕事はなにもお経を誦(よ)むだけではありません。伽藍(がらん)の維持、境内の美観の維持、特に庭園の管理は重要な仕事です。沢山の収入のある寺であれば庭園管理などを専門業者に任せることもできますが、骨山(こっさん)の常信院では到底それも叶わず、自然住職である私の仕事になります。

春から夏、そして寒さが訪れるまで草取り、植木の剪定、斜面の草刈りに追われています。

やがて、冬がやってきて霜が降り落葉樹が一斉に葉を落とし、その片付けが終わった頃より土の仕事が始まります。

正月をまたいで素地を作る。生まれ育った愛知県知多半島の叔父さんの田んぼの粘土をベースに造っていますが、今年は瑞浪の或る方の助言をいただいて白磁器も試しています。そうして乾いたところで、2-3月に穴窯に火を入れる。

出来上がった作品の出来を問う事なかれ。

作品の出来、不出来より昔人のように「風火水地」の力を借りて薪を焚くことで、若い頃に思い描いた「半農半陶」ならぬ「半僧半陶」の「安心」の生活を送ることが重要だと思っています。

と、こう書くと実際の私を知らない方は如何にも悟った御仁のように思われるでしょうが、その中身はその場しのぎ、場当たり的人生のお酒大好きの小心者でございます。

はんこ399-2602  飯田市下久堅下虎岩2213
「風窯」 (ふうのかま)
谷川大門 (たにかわだいもん)