キツネ、物語3 2010.07.12

鬼の許しの無いまま、子供に声をかけますと、鬼の見張っている子供全員が、
そのまま地獄へ送られてしまいます。
地獄へ送られたら、幽霊になる事も成仏する事も、まま成りません。

地獄の沙汰も何とやら、と言いますが、犀の河原にも通用するものがございます。
キツネには九本の尻尾がありまして、キツネの妖術の源に成っております。
この尻尾、一本、鬼が食べますと百年は寿命が延びるという代物。
キツネの尻尾一本と引き換えに、お声掛けを許して頂くと言うのが暗黙の了解。

「分かっております。」
そう答えたゴン太、全身の気をお尻に集めると、ブルンと尻尾を振りました、
それまで隠れておりました九本の尻尾が、「ボーん」白い煙と変化した妖気と共に現れます。
「おーおー、、、、、おっ、、?。おい、尻尾は二本しかないぞ。」
「分かっとる。」
「ゴン太、覚悟して来たか。」
「キツネは大和の守り。全て承知。赤鬼さまに差し上げます。」
「この一本、ワシが食らえば最後。お前はただのキツネ。いいのだな、、、」
「おヨネさんには世話になったから。これが最後で切りが好い。」
「黄泉の世の決まりとはいえ、賽の河原に八度も来たか、、、、、、
 ゴン太、子供が好きか?、、、嫁さんはいるのか?、、、、」
「なんでぇ、鬼に心配してもらったって、、、赤鬼さん嫁の世話してくれるのかい、、」
「あ、は、は、。そりゃ無理だ。、、、長い間、ご苦労であった、な。では、、」
赤鬼はそういうと、ゴン太の尻尾の一本をつまむと、くいっと引き抜いて口の中へ、
「いてぇな、気をつけてくれよな。、、、じゃ、声掛けさせてもらいますよ、、」

「タイチ、時又村のタイチ。キツネの声を聞け。」
すると、タイチの目に生気が戻って参ります。瞬き、目をこすり、ゴン太と目と目が合いますと、
「稲荷のキツネ、、、、」小さい口からはっきりと聞こえました。
「タイチ、よく聞け、母ちゃんから、言付けを預かって来た。母ちゃんの言ったまんま言うから、
 そのまんま聞くんだぞ、、、、、、、、、、、、
 ((ぁんな、タイチが生まれてから、ずっと楽しかった。幸せだったんな。
 とってもとってもきれいな思い出が、たくさんたくさん残っとって、、、だもんで母さんは大丈夫。
 タイチの事は忘れんし、大好きだし、これからもちゃんと生きて行ける。、、母さんは大丈夫。
 、、、、、、、、、、、、、
 だで、タイチも泣かんように頑張って、、、盆正月は幽霊になってこい、待っとるでな。))
 、、、それから、これ、芋預かって来た。いいかタイチ、一人で食べちゃダメだ。
 これは、稲荷のキツネからの言い付けだ。ここにいる五人で分けて食うんだぞ。
 一人で食べちゃダメだぞ。、、じゃ、キツネはもう行くから、ちゃんと食べるんだぞ。」
タイチは何も言いませんが、目からは大きな涙の粒が一つ二つとこぼれてまいります、

少し離れたところに赤鬼が座っております。その脇を抜けてゴン太が帰ろうといたしますと、
「神様は知っているのか、、、祠へ帰るのか、、、」
「神様は、言わなくたって分かってる。しばらくはあそこに置いてくれるさ。、、、、
 それより、嫁さん見つけて、さっさと山の穴にでも引っ越すかな、、、」
「もう少し居てもいいんだぞ、ここを出ればただのキツネ。タイチと話しをしていてもいい、、、」
「もういい。タイチは大丈夫。おヨネさんも大丈夫。おいらも、大丈夫。
 キツネはキツネ。変わりゃしないさ、、、」
そう言って歩き始めます。広い河原の端まで来ますと、その向こうには草っ原が広がっております。
そこから先は神の国。黄泉の世界との境目に成ります。
意を決して飛ぼうとしておりますと、遠く後ろから赤鬼の声、
「もう、ここへは来れないんだ、気をつけてな、、、」
ゴン太は一気に飛び越えながら、
「もう、ここへは、、、コン!」

ゴン太最後の旅、お後がよろしい、、、かどうか、、、、