りょうた・紀の介 卒業記念二人会(2005.3.26) 
土曜笑学校
2005年3月26日、飯田市北方会館で、りょうた(平澤良太君)と紀の介(吉川紀介君)
の伊賀良小学校卒業記念二人会を開きました。80数名にご来場いただき、2年間の
活動の集大成を発表しました。テレビ局、新聞社など多くの報道陣も詰め掛け、取材し
ていただきました。ありがとうございました。
開演〜りょうたの一番太鼓で幕開け
りょうたが一番太鼓を披露して幕開け。
地元出身の橘家亀蔵さんから習いま
した。本来は開場時に叩くものであり、
来場者に叩く姿を見せるものではあり
ませんが、今回は練習の成果を見て
いただくため、特別に高座でバチさばき
をご覧いただきました。

少々リズムが狂い、もう少し力強さが欲
しいところですが、短い練習期間を考慮
すれば及第点といったところでしょう。
“校長先生”があいさつ
続いて講師の参流亭べら坊こと平沢富
招さん(56)が土曜笑学校と2人の紹介と、
二人会の主旨を解説。
「子供が集まるのかが不安視された立ち上
げ当初、2人は1期生として入会し、さまざま
な活動をやってきた。落語はやればやるほど
難しい芸で、学業のかたわら台詞など覚えな
ければならないことが多いが、朗らかに、元気
にやってきた」

「恐らく小学校卒業記念落語会は他所ではな
いだろう。いろんな意味で記念の会になる。
2年間やってきたが、落語は大人がやっても
難しく、100点ということはない。今まで稽古し
てきた落語を一生懸命披露します。2席目は
ネタおろしです。面白くなくても笑ってやって
下さい」
本日の主役・りょうたと紀の介が2年間の成果を発表
まずはりょうた君が登場。「え〜本日は紀
の介君はともかく、わざわざ私のためにお

越しいただき、誠にありがとうございます」
とやって幸先よく爆笑を誘うと、亀蔵さん譲
りの小噺“奥様シリーズ”で肩慣らししてか
ら「つる」へ。小気味良いテンポと間で好演
し、随所で笑いを誘った。

続いて紀の介が泳ぐように登場高座に登場
し「りょうた君はともかく、私のためにこれほど
大勢の方に…」と反撃して、またも大うけ。
本日のゲスト・らく次さん直伝の「ねずみが
チュー」や「ねこ」などの小噺を披露してから、
快楽亭ブラ汁さんから習った「味噌豆」を。
いきいきとした表情からは、まるで落語の
世界で遊んでいるような楽しさが伝わって
来る。2人とも二人会に向けて練習してきた
成果を出していた。いい出来であった。

2席目は「松竹梅」を2人で半分ずつ演じる
という珍しい構成とした。
実は本番を前に「僕が『松竹梅』をやる!」
と言い張って譲らなかったのだ。それほどに
志の吉さんの模範口演に感銘を受けたとい
うわけだが。もともと良太に「牛ほめ」、紀の
介には「平林」をやらせようと考えていたべ
ら坊さんは「本番までにうまくやれるようにな
った方にやってもらう。負けた方は元々予定
していた噺をやれ」とけしかけた。
仲のいい2人だが、この時ばかりはライバル
心をむき出しにし、それぞれ自宅練習に励ん
だようだ。

私が「半分ずつやらせては?」と提案したとこ
ろ、それには全く反応しなかったべら坊さんだ
が、その時既に「その案を採用しよう」と思って
いたらしい。しかし、敢えて2人に非情ともいえ
る宿題を与え、小学生最後のスパートをかけ
させた。

前日、2人で前半と後半を半分ずつ演じるよう
指示された2人は安堵の表情。普段家では
全く練習しない紀の介だが、この時ばかりは
目の色を変えて練習していたらしい。紀の介の
祖母は涙を流して喜んだという。

結果は…違和感もなく大成功。前半を担当した
良太は5人の登場人物を見事に演じ分け、紀の
介はフラを生かして後半のヤマ場を盛り上げた。
前半と後半をどちらが担当するかが鍵だったが、
べら坊氏の策はバッチリ功を奏した。
「奥様シリーズその4!」を嬉々として披
露するりょうた。亀蔵師匠、その節はお
世話になりました。

高座返しとめくりを担当したケント君。
おひねりを懸命に拾う小さな姿が可愛
いと好評だった

「アチチチチッ」。鍋の蓋を取る仕草
をする紀の介(ブラ汁さん直伝の「味
噌豆)

伊賀良小の校長先生(本物)が講評を…
今春で退職する伊賀良小の下田六馬校長(来賓
としてご招待)は、2人に倣って高座に正座して素
晴らしい講評を述べて下さいました。
「(年度末と退職で)忙しく、眉間に皺を寄せる毎
日だったが、2人の噺を聴いて久しぶりに笑った。
へたに寄席にいくより面白いのではないか。こん
なことなら、卒業式前に体育館でやってもらえば
よかった」
「伊賀良小では児童の表現力を伸ばそうとしてい
るが、なかなかうまくいかないのが現状。本当に
伊賀良小の生徒かと思うほど表現力が豊かで立
ち振る舞いが堂々としている。(学校教育とは)別
のところで伸びていてくれたことを嬉しく思う。
2人は素晴らしい人間になっていくと思う。落語家
にならなくていいが、きっと何かに役立つと確信
している」
手厳しいプロの洗礼
続いてらく次さんが講評を。「子供が落語をやって
いる姿は可愛いからいい」と評したらく次さんは、
「彼らが落語を語るとき、どんな気持ちなのかが
気になる」と、2人にインタビュー。

「面白い」「いろんな人が出るから、その人になり
切ってやろうと考えている」

受けた時は?「よかったなあ」などと恥ずかしげで
気の利いた回答ができない2人に「こんなに人前で
大きな声が出せるのに…」と鋭いツッコミを入れた
らく次さんは「僕のライバルになられると困るから、
落語家にならなくていいよ」と半ば本気で牽制して
いた。

「私は土曜笑の最初の頃からお世話に…、いや、
お世話していたが、落語は大人の芸能だと思って
いたから、正直なところ落語の途中で騒がれたり、
話しかけられたりする生意気な子供が多いのでは
ないかが心配で、正直なところ嫌だなあと思って
いたが、子供たちは最初の段階からすごく聴いて
くれた。一生懸命教えたら、もっと生意気になった」

…ちょいとブラック過ぎかも。

〜中入り〜
小僧ども、これがプロの芸だ
らく次さんは中入り後、“模範落語”として「看板の
ピン」と「宿屋の冨」で、プロの凄さを見せつけた。

久々に聴いたが、切れ味が鋭くなっている印象を
受けた。特に博打打ちの親分のいなせな雰囲気は
なかなかで、ちょっと子供には真似できないレベル
のものであった。
「いいか、よく聴け、これが本寸法の芸だ」
とまでは言わないまでも、プロの本領を
発揮してくれました

贈る言葉 ゴーストライター自ら感泣


続いて下級生2人が着物姿で登場し、
卒業生のために用意した(してもらっ
た)送る言葉を発表。りょうたと紀の
介はユーモラスな内容に笑いをかみ
殺しながら聞き入った。
以下全文(子供が独力でここまで考
えられればすごいが、残念ながらさ
にあらず)。
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りょうた先輩!紀の介先輩!小学校
卒業、おめでとうございます!本日の
盛大な卒業記念二人会を記念して、
土曜笑学校の後輩一同を代表しまし
て「贈る言葉」を述べさせて述べさせ
ていただきます。

振り返れば1年前、私たちが第2期生
として土曜笑学校に入学した頃、お2
人は第1期生として大活躍しておられ
ました。

りょうた先輩は、今の私たちではとて
もできそうもない「がまの油」「親の顔」
「道灌」など…長くて難しい演目を、次
から次へとマスターし…落語の練習の
ため、おそらく学校の宿題などやってい
る時間はなかったと思われますが…

それでも通知表の成績をCからB、BからAに上げ、
私たち後輩に最高の手本を示してくれました。

また…土曜笑学校のリーダーとして、常に皆をひっぱ
り、私たちに高座でのマナー、態度、あいさつなど、
基本的なことを親切・丁寧に教えてくれました!

私たち後輩も、りょうた先輩の落語に対する情熱、
常日頃の態度を見習っていきたいと思います!

紀の介先輩!ご卒業おめでとうございます!
紀の介先輩は土曜笑学校にはなくてはならない存在
でした。
厳しい稽古の時も、常にいいタイミングで冗談を言い、
ギャグを飛ばして皆を笑わせ、明るく楽しい雰囲気を
作ってくれました。
先輩後輩の区別をすることもなく、いつも私たちと一緒
に遊んでくれ、その仲で「落語とは何か」「落語の演じ
方、話し方」「高度な人物表現」などを…一切教えてく
れず……先生に小言を言われた時、それをいかにう
まく聞き流すかを教えてくれました。私たちも見習って
いきたいと思います。

お二方はここで、土曜笑学校小学生の部をかろうじて
卒業し、中学校に進学するわけですが、あとのことは
私のような「出来の良い」後輩が…責任をもっていい
加減にやっていきますので、安心して、心安らかに…
いや、心置きなく中学の部に進んで下さい。

これからも土曜笑学校の発展のために大活躍してい
ただくことを願って「贈る言葉」とさせていただきます。

土曜笑学校落語部
立”川カッキーこと大月和樹
立”川ゴットこと後藤光博

…大いに盛り上がりました。舞台袖ではべら坊さん
が目を潤ませておりました。
らく次さんが似顔絵をプレゼント
らく次さんが再び登場し、開演前のわずかな時間に
描いた2人の似顔絵色紙をプレゼント。駆け出し時代
に落語の世界に導いてくれた先生直筆のプレゼントに
2人は大喜び。

今後の抱負を聞かれた2人は「中学に行っても土曜
笑で落語を続け、もっと噺を覚えて活躍したい」(りょ
うた)、「中学生になってもテキトーに落語を続けて行き
たい」(紀の介)

それぞれの性格が如実に現れたコメントでした。
最後に、らく次さんの音頭で三本締め。

ご来場ありがとうございました。