年取り行事 3 四角いお供え |
此田 藪下家の四角いお供え |
正月の食事は雑煮などもちはつき物ですが、筑北地方では、特に元日はもちを食べないと
いう慣習があります。
お供えといえば普通丸もちですが、此田の藪下家では、四角い切り餅です。
これにはいわれがあり、先祖が後家になったので、それ以後切り餅になったということで
今でも守られています。
餅には米の粉を蒸して作る柏餅や、栗・ヨモギ・栃の実などを入れてつくものなどがあり
ますが、お祝いの時、初誕生日などにも餅をつきます。
餅には神霊が宿ると考えられており、凶事の時にもつかれました。
南信濃村では二十八日に餅つきをする家が多いのですが、大正月を迎えるのに他にどのよ
うな行事が行われるのでしょうか。
十二月終わりころ、竹の葉でこしらえた柄の長いほうきでススはらいをします。
木沢では二十三日、和田や南和田は二十五日に、此田では三十日に行いました。
和田などではススハライといいますが、十原、此田ではスストリといいます。
松迎えは二十八日で、七や九の日また三十一日はイチヤマツといって嫌いました。
南信濃村では昭和三十六年ころ、松の代わりに紙に門松を印刷したものを
使ったことがありました。これは自然を大切にしようというところから考えられたもので、
数年続けられました。
年取りのとき、年神さまをまつりますが、木沢では座敷の床の間に、新しい縄、新しい板
で棚を作りまつりました。そこに供えるものを、十原では『センババイ』といい此田では
『オセンバイ』といいました。
年々、大晦日の年取りの意義もうすれ、また古い慣習にとらわれなくなってきています。
伝統的な年取り料理にかわって寿司や、すき焼き、しやぶしゃぶの家庭が増えているともい
われます。
塩辛いスナック菓子やインスタント食品の味に慣れた子どもたちに、郷土料理や素材を生
かした本当の味、『旨味』を是非知ってもらいたいものだと思います。
次の作品へ |