春先きの暖かい晩に、後家(ごけ)のお久(きゅう)さが用事があって、田圃の土手を行くと、
田圃ん中に蛙が大へんに居って、ゴケ、ゴケ、ゴケと口をそろえて鳴いて居る。
お久さは怒って、 「人を後家だと思って馬鹿にせんな、そんな事をこくと、えらい目に会わしてやるぞ」、 と云って、一匹の蛙を足で踏み潰したら、 「オキュウ」と云って鳴いた。 次の作品へ