猪 と 亀

 

 
 昔大ぜいの
(けだもの)が集まって力くらべをしたことがあった。
その頃は(いのしし)はまんだ首が長かったし、亀はせいが高かった。
 その猪と亀とが力(くら)をすることになった。

 猪と亀の押しやっこがはじまった。

あっちからもこっちからも、猪に力を入れるものと亀に力を入れるものと、

それはそれは大さわぎだった。
 けれどどうしたって亀が猪に勝てる訳がない。
とうとう亀は押しつぶされて、それであんな()いつくばったような格好になってしまった。

 勝った猪は大威張りで、「俺は力くらべにも強いが飛びっこも早いぞ」

と言ってこれ見よがしに飛びだした。

そしてえらい勢いで飛んで行ったが、道の曲がり角に来た時曲れなんで、前にあった大岩に頭

をぶっつけて、とうとう首をつっこんでしまった。

 それから猪の首があんなに短くなってしまったちゅう事だ。

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