長い名前

 


 むかし馬鹿な親があって、生れた子供に、「短い名前ではどうも
(えら)そうでないで、

長い名前を付けてやらず」と云って、

まにまにままにしゅりしゃりとつくりもつくりだあるまかいの万太郎

と云う名前をつけた。

或時母親が井戸へ落ち込んだので、万太郎に助けて貰わっと思って

「まにまにままにしゅりしゃりとつくりもつくりだあるまかいの万太郎ヤーイ」

と呼ぶつもりで、大きな声で呼ばったが、まんだお
(しま)いまで

云い切らんうちに母親は死んでしまった。

それで(あんま)り長い名をつけるもんじゃあないって。                                                     

(此の話は万太郎が河へ落ちて、それを見た母親が大きな声で(むすこ)の長い名を云って、

(みんな)の衆を呼び集めて居るうちに、万太郎は流れて死んじまった、とも話して居る。) 

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