2006年(平成18年)7月9日(日曜日)信州日報掲載記事
南信濃の名水「観音霊水」
龍淵寺
境 内 ミネラル豊富でおいしい
飯田市南信濃和田の盛平山(七二三b)の麓にある龍淵(りゅうえん)寺境内にある湧き水
の成分がカルシウムとマグネシウムを多く含んだ硬水であることがこのほどわかった。
「観音霊水」と名付けられたこのおいしい水″の成分は、名水百選にひけをとらない高い値をもつ。
地元の新しい観光名所・観光資源として地域の活性化につなげたい―と住民は大きな期待をかけている。
下伊那教育会の元陸水委員・浅野清志さん(五六)泰阜南小校長=が十年ほど前、郷土調査として
飯田下伊那の調査を行った際、水の成分調査でカルシウムを多く含む弱アルカリ性であることがわかった。
「カルシウムを多く含んだ天然水としては非常に稀」と希少価値が高い水であると説明。
また、汚染の状態を示す塩素や硝酸は低い値を示しており、「おいしい飲料水の値としては申し分ない
もの」と評価している。
戦国時代から江戸時代にかけ一帯を治めた遠山氏の居城跡に建つ龍淵寺。
遠山氏の時代以降、四百年にわたり一度も水は枯れることなく、今日に至る。
水量はほぼ一定。水温は一四〜一五度を保ち、冬でも凍ることはない。無色無臭。
すでに地元住民の生活水としては定着しており、毎日ペットボトル片手に汲みに訪れる人もいる。
水場周辺の整備は龍淵寺の盛宣隆副住職(五三)が十二年前に樹齢一千年ほどのサワラの流木を
くり貫き水桶を作るなどし、環境を整えた。
観音霊水の名は、盛平山山頂付近に霊場があることから三年前に命名。
盛副住職によると、同寺周辺は中央構造線、遠山赤石構造線、赤石断層三つの断層が絡み合う
複雑な地形にあり、湧き水は南アルプス池口岳(二三九二b)を水脈に、秩父帯の石灰岩層を長い
年月をかけて流れ出しているらしい。
生活水として利用している盛副住職をはじめ家族は、これまでほとんど歯医者にかかったことがなく、
カルシウムが多く含まれているためでは―と分析している。
盛副住職は今度の発見について、「地域にとって新しい財産になると思う。広く周知し、観光PRに
つなげれば」と期待を込めた。
観音霊水はスポーツ後やダイエット時のミネラル補給に適し、同じく飯田市にある猿庫の泉
(上飯田)は逆に軟水で、お茶をたてるのに適している。
今後、さらに詳しい水質調査を実施する予定で、現在の正確な成分値が明らかになる。
飯田市は天然の軟水と硬水の二つの名水を手に入れたことになるが、飯田市環境課は
「非常に興味深い天然資源。今後の調査の推移を見守りたい」としている。
成分表は浅野校長がおよそ十年前に作成したもの。環境省選定の名水百選のほとんどは軟水。
硬水の代表的存在は「龍泉洞」(岩手)だが、表から観音霊水はカルシウムの含有量が倍以上
あることがわかる。
また、きれいな水の目安となる炭酸水素の量は一九六・一。
龍泉洞の三倍以上あり、龍泉洞の透明度がおよそ四十二bあることから、観音霊水は百b以上の
透明度を誇る。
観音霊水は現在、市販中で女性に人気のミネラルウォーター「Contrex」(原産・フランス)の
成分値と似ている。Contrexは、ナトリウム〇・九一、カルシウム四八・六、マグネシウム八・四
であることから、体にほぼ同様の効果があると思われる。
成分表
地 点 | Ph | Rp | Na | K | Ca | Mg | Cl | HCO | 調 査 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
観音霊水 | 7.8 | 8.2 | 4.5 | 0.7 | 47.0 | 12.2 | 1.0 | 196.1 | 95年10月 |
飯田(猿庫) | 6.7 | 7.4 | 4.7 | 1.5 | 4.0 | 0.3 | 1.6 | 21.2 | 96年 6月 |
龍泉洞(岩手) | 7.6 | 7.8 | 2.3 | 0.4 | 21.4 | 1.0 | 2.5 | 62.1 | 86年 5月 |
2006年(平成18年)7月2日日曜日 南信州新聞掲載記事
南信濃のわき水は“名水”
龍淵寺の「観音霊水」調査で判明、新たな観光資源に
飯田市南信濃和田の龍淵(りゅうえん)寺境内にあるわき水「観音霊水(かんのんれいすい)」
にカルシウムとマグネシウムが多く含まれていることが、30日までに分かった。高い数値を示し
ながらも、飲用として整備されている天然水は珍しく、新たな観光資源につながる―と住民たち
は期待を膨らませている。
下伊那教育会の元陸水委員、浅野清志さん(56)=泰阜南小校長=が試みた水質調査で判明した。
水質はカルシウムを多く含む弱アルカリ性。カルシウム、マグネシウム、炭酸水素の濃度の高さが
特徴だ。
汚染などがある場合に高い数値を示す塩素と硝酸は「ともに低い値」と指摘しており、その上で
「飲料水としては理想的な状態にあるのでは」とみる。
同じ弱アルカリ性で、環境省選定「名水百選」に指定されている「龍泉洞地底湖の水」(岩手県
下閉伊郡)や「宗祇水(岐阜県郡上市)などと比較しても濃度は2倍以上。
「『名水百選』と比べても高い仲間に入る名水」だという。
カルシウムとマグネシウムの含有量でみる硬度は、4段階のうち2番目に硬い「硬水」に匹敵。
ミネラル補給や健康飲料に適しているーとされる数値を示した。同じ「名水百選」に指定される
飯田市の「猿庫の泉」は軟水でお茶などに適している。
周辺は中央構造線の東側で、遠山赤石構造線、赤石断層と3つの断層が入り組む。水源は盛平山
(標高723b)。龍淵寺の盛宣隆・副住職(53)によると、複雑な地形から南アルプスの池口岳
(標高2、392b)を水脈としており、秩父帯の石灰岩を通って何十年もの長い年月をかけて盛平山
にたどり着く―とみている。
“きれいな水”の指標である炭酸水素は「龍泉洞地底湖の水」の3倍以上、「宗祇水」にいたって
は7倍以上。
二酸化炭素だけを含んだ水が、南アルプスの岩石と反応して成分を溶かし出しているのを裏付ける。
盛平山の中腹にわき出た水を取水し、約300bのパイプで龍淵寺境内まで引く。
遠山氏が領土を治めていた400年以上前に整備され、生活水として利用されているが、これまでに
一度も枯れたことがない。
頂上付近に霊場があることから、わき水を「観音霊水と名づけた。
龍淵寺では現在も生活水として利用しており、80年間使い続けている住職の盛文雄さん(80)
はこれまでにけがや病気はなく、昨年になって初めて歯医者に足を運んだほど。
盛住職の家族も同様で、近くの住民は「わき水に含まれているカルシウムの多さが要因では」と話す。
水量はほぼ一定で、水温は14・5度を保つ。無色透明の無臭。
水質は10年前の調査時とほとんど変わっていないという。
盛副住職は「地域にとって新たな発見であり、周辺の観光施設と結びつけて誘客につなげたい」
と期待している。
付記 観音霊水の水質検査 財団法人・中部公衆医学研究所 平成18年8月9日 実施
名 称 | Ph | カルシウム | マグネシウム | 硬度 |
観音霊水 | 7.8 | 45.8 | 12.3 | 163.7 |
龍泉洞の水 | 7.6 | 35.2 | 2.2 | 96.8 |
猿庫の泉 | 6.7 | 4.0 | 0.3 | 11.2 |