諺

                          南信濃村史 「遠山」から掲載

   気象に関すること

 

大雪は豊年のきざし

八十八夜の別れ霜

のみの四月、かの六月

降れよ朔日、照れよ三日

寒四郎に寒九の雨

梅雨入りの宵晴

己にもちかねて午に降る

 

   衣に関すること

 

ぼろでも温い方がよい

借着するより洗い着せよ

着れば着さむい

下手の長糸上手の小糸

 

   食に関すること

 

出がけの水は死に水

一杯飯はわざをする

麦飯にとろろ汁

晩の飯は極楽飯

朝の飯は地蔵飯

たばいものの谷こかし

香りまつたけ味しめじ

しわん坊のお茶しい

夏のぼた餅犬も喰わん

 

   住に関すること

 

家の仕売は引き合わぬ

ゆるり四隅による荒神

 

   身体に関すること

 

庇はかぎだしのもと

黙りものの庇がくさい

 

   生死に関すること

 

親がどんすりゃ子が貧する

子なしに子をくれるな

向うずねの痛さと孫の可愛さはこたえられぬ

年寄の子は寒がる

二つ三つは可愛い盛り、四つ五つはやだくそ盛り、六つ七つは憎まれ盛り、九つ十は手習い盛り

ねる子はまめだ

七月のなげすわり

ある子には泣くが無い子には泣かぬ

瓜のつるには茄子はならぬ

子三人子長者

たまに出る子は雨にあう

馬鹿の子を持ちゃ火事よりこわい

身をすてる薮はあるが子をすてる薮はない

わらをたたく力は親はくれぬ

油をしぼる力は親がくれる

油と子はしぼるほどできる

 

   夫婦に関すること

 

ひつじ女は門にも立たすな

未年の一年子は金たいこで探せ

女房の悪いは六〇年の不作

家のしんしょうは嬶で持つ

姉嬶は倉を建つ

嫁の見置きと山のものの見置きはあてにならぬ

夫婦喧嘩と北風は日暮れにゃ止む

 

   嫁姑に関すること

 

煮ても焼いても食えないものは姑婆さに栗のいが

姑という字はむずかしい、仮名で書いてもよめにくい

姑とはたごは置き場に困る

姑とこっぱ板をくべるときはたてるものだ

娘一人嫁入させると半身代済む

嫁は上り身代からもらえ

嫁の姑になるのの早さよ

姑の留守は嫁の祭り

 

   農業に関すること

 

田を作るより畦を作れ

二百十日の落し水

二百十日に一穂走り

薬九層倍百姓百層倍

五月女に秋男

稲のすす花を背負って草をとれ

麦は百日の播き旬に三日の刈り旬

 

   其の他

 

のろま一人半

あわてもの半人足

金とくそだめはたまる程きたない

にぎり庇三里

女賢くても牛を売り損ねる

雪と炭

土用に赤い雪

いり豆に花が咲く

商売は牛のよど

褌はかでも義理はかかすな

鉄砲玉の飛脚

あて事と越中褌は向うから外れる

貰うものなら元旦のともらいでもいい

早飯早くそ早支度

早飯早くそげいのうち

うさぎのしりをひやすくらいだ

手樋でいもを洗う様だ

大樹の下で笠をぬげ

爪で拾って箕でこぼす

だまりかじかは千里をはじく

山とうどんはダシを見て買え

元木に勝るうら木なし

のみのきん玉八裂き

乞食の朝うた

いも種はぬすんでも子種はぬすむな

日陰の豆でも時くりやはぜる

栃餅でねばり気がない

辰己の風はこわい

となりで倉をたてばこちらははらをたつ

隣のお蚕近所の土蔵

馬に乗ってみろ人にはさそってみろ

秋の夕焼け鎌をとげ

田を行っても畦を行っても同じ事だ

紺屋の明後日であてにならぬ

ねぶかぶしでふしがない

おひな様でいつも同じ着物だ

貧乏人の嫁入りで長持ちがない

唖の馬方でどうとも言わん

せっちん火事でくそやけだ

落ちそうで落ちないのが牛のきん玉

乞食の川流で替え着がない

秋葉様でも火がつきや燃える

ひきうすやろうでごくつぶし

猫のかんぶくろで後びっさり

俗信へ