『小宮と滝沢』 25 「イタ」 「何?」 「切った。手首」 「え、今?」 「いや、昨日。午後番でダンボール持った時」 「ああ、それで両手首」 「うん」 「消毒とかしたの?」 「してない」 「結構切れてるじゃん」 「‥」 「小宮?」 「これさあ‥。皆どう思うかなあ」 「どう?」 「リストカット」 「え、イヤ、それにしては切り口が浅いし荒いから大丈夫でしょ」 「‥」 「小宮?」 「そういうプレイとか」 「‥」え」 「思われるかなあ」 「プ、プレイって、小宮そういうの知ってるんだ」 「まあ人並みには」 「人並みって」 「普通でしょ」 「でも小宮って、そういうのプラトニックだから、想像できない」 「そう?」 「何で知るの? ビデオとか?」 「ビデオは18禁だろ。漫画だよ」 「え、読むんだ」 「たまに」 「やっぱ想像できない」 「いい加減そういうの知ってないとマズいかなと思って読んだ」 「どうだった?」 「別に。やり方だけ見たようなもんだし」 「ふうん」 「中には気持ち悪いのもあって吐きそうになった」 「え」 「でも勉強になったよ。あーゆー漫画があるおかげでビデオ見れない18以下の奴もやり方を知れるんだと感心した」 「なんか視点が違うけど」 「滝沢は見てるの? ビデオ」 「はっ!? 見てないよ」 「さっき一番にビデオって言ったから見てんのかと思った」 「見てません」 「ふうん」 「見てません」 「‥」 「‥」 「‥‥」 「‥もー、こんなこと言ってないで、ほら保健室行くよ」 「手え掴むなよ。痛いよ」 「隠れて丁度いいでしょ」 「そんなだからデキてるって言われるんだ」 「は? 誰が」 「滝沢と」 「‥マジ?」 「これだから鈍感は」 「知らないし」 「ウワサだけど」 「聞いたことない」 「そう? 結構聞くよ」 「否定してんの?」 「や、後ろで言ってるだけだし、めんどいし」 「コラ」 「だからこの傷は滝沢が付けたと思うわけだ。皆は」 「ちょいちょい」 「何」 「マジで誤解を解いてくれ」 「言われるってことは、滝沢がそういう奴だと思われてるって事だよ」 「Sに見えるって事?」 「どっちかって言うとムッツリっぽい」 「ム‥」 「これだから自覚無い鈍感は」 「何て言い返したらいいのか分からない…」 「とりあえず保健室着いたし手ぇ離せば」 「あ」 「先生達の間でもウワサになる」 「もうっ。じゃあこれからは気を付けますよっ」 「ハイハイ」 「ちょっと、信じてないでしょ」 「ハイハイ」 「もー」 とりあえず、傷を見て保健の先生がどう反応するのか、楽しみだな。 ●← 25 →● TOP |