『小宮と滝沢』








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「イタ」
「何?」
「切った。手首」
「え、今?」
「いや、昨日。午後番でダンボール持った時」
「ああ、それで両手首」
「うん」
「消毒とかしたの?」
「してない」
「結構切れてるじゃん」
「‥」
「小宮?」
「これさあ‥。皆どう思うかなあ」
「どう?」
「リストカット」
「え、イヤ、それにしては切り口が浅いし荒いから大丈夫でしょ」
「‥」
「小宮?」
「そういうプレイとか」
「‥」え」
「思われるかなあ」
「プ、プレイって、小宮そういうの知ってるんだ」
「まあ人並みには」
「人並みって」
「普通でしょ」
「でも小宮って、そういうのプラトニックだから、想像できない」
「そう?」
「何で知るの? ビデオとか?」
「ビデオは18禁だろ。漫画だよ」
「え、読むんだ」
「たまに」
「やっぱ想像できない」
「いい加減そういうの知ってないとマズいかなと思って読んだ」
「どうだった?」
「別に。やり方だけ見たようなもんだし」
「ふうん」
「中には気持ち悪いのもあって吐きそうになった」
「え」
「でも勉強になったよ。あーゆー漫画があるおかげでビデオ見れない18以下の奴もやり方を知れるんだと感心した」
「なんか視点が違うけど」
「滝沢は見てるの? ビデオ」
「はっ!? 見てないよ」
「さっき一番にビデオって言ったから見てんのかと思った」
「見てません」
「ふうん」
「見てません」
「‥」
「‥」
「‥‥」
「‥もー、こんなこと言ってないで、ほら保健室行くよ」
「手え掴むなよ。痛いよ」
「隠れて丁度いいでしょ」
「そんなだからデキてるって言われるんだ」
「は? 誰が」
「滝沢と」
「‥マジ?」
「これだから鈍感は」
「知らないし」
「ウワサだけど」
「聞いたことない」
「そう? 結構聞くよ」
「否定してんの?」
「や、後ろで言ってるだけだし、めんどいし」
「コラ」
「だからこの傷は滝沢が付けたと思うわけだ。皆は」
「ちょいちょい」
「何」
「マジで誤解を解いてくれ」
「言われるってことは、滝沢がそういう奴だと思われてるって事だよ」
「Sに見えるって事?」
「どっちかって言うとムッツリっぽい」
「ム‥」
「これだから自覚無い鈍感は」
「何て言い返したらいいのか分からない…」
「とりあえず保健室着いたし手ぇ離せば」
「あ」
「先生達の間でもウワサになる」
「もうっ。じゃあこれからは気を付けますよっ」
「ハイハイ」
「ちょっと、信じてないでしょ」
「ハイハイ」
「もー」

とりあえず、傷を見て保健の先生がどう反応するのか、楽しみだな。








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