『小宮と滝沢』








24







「明日雨降らないかなー」

「いくら言っても晴れだよ」

「うざったいんだよ球技大会とか」

「延期は無いってさ」

「思い出作りとか言ってたけどさ、担任。いらねーよって」

「勝てる気しないしね」

「きっと脳ミソも筋肉なんだ。絶対」

「クラスも盛り上がってないし」

「怪我でもしてれば休めたのに‥」

「小宮‥‥そんなに心配しなくても大丈夫だよ」

「騒がしいのが嫌」

「静かに球技大会は‥‥無いね」

「すぐに負けて屋上で寝る」

「先生に見つかったらマズイよ」

「そんなん、具合悪くなって休んでましたで済むわ」

「体育館の2階の倉庫のとこなら隠れて寝れるよ」

「近すぎ。すぐ真下で試合してんじゃん。うるさくて居られない」

「使ってない部屋‥‥。プールの更衣室は」

「テニスコートから丸見え」

「どこも駄目かぁー」

「なんで球技大会なんてやるんだか。競歩だけで充分」

「2ヶ月連続は無いよね。でも小宮、競歩は速かったじゃん」

「抜かれるとイラつくから」

「‥‥ねぇ、そのプライドを球技にも向ければいいんじゃないの」

「ノルマとか連帯責任とか無ければそれなりに頑張るよ」

「走るだけなら自己責任だからなー‥」

「ひとりなら好きなペースで出来るし」

「2人以上だから味わえる感動とか」

「へー。よそでやって」

「ほんと嫌なんだ‥」

「ま、どうせ誰にも期待されてないだろうけど」

「みんな何であんな風にできるんだろ」

「難しく考えすぎなんじゃない、滝沢は」

「目がもう追いつかないもん」

「もんとか」

「やっぱり、小学生の時からなんかやれば良かったかなー。小宮は中学の時は何部?」

「幽霊」

「予想通り‥‥」

「楽で良かったけど、入試の時はちょっと面倒だった」

「理由訊かれるからね。何て答えたの」

「留守番」

「冷静だな」

「ろくに調べるでもないし、そーいうのはハッキリ答えた方が印象いいでしょ。…明日さ、終わったら りんご屋行こう。ご褒美無いとやる気しない」

「わかった。じゃあ優勝したらドーナツ10個買ってあげる」

「ヲイ。……それ、逆もあるってことだろ。滝沢が勝っても奢らんぞ」

「んー、その可能性は絶対に無いかな」



その言葉通り、お互い個人も団体も、1回戦で負けたのだった。








← 24 →


TOP