最初の最初のお題   瓜の内万字

 この紋章は「吉田松陰」の家紋ですが、私にとって最も忘れがたく、また多くの物語を語る第一の紋章だったので、一番目に選びました。幕末の人物達にはお尋ねものになってしまったため偽名を用いざるを得なかった人が多数いたのですが、松陰吉田寅次郎も、その一人、友人との約束を守るために脱藩しておおっぴらに名乗れなくなったので、自分の家の家紋の名前を偽名に使ったのでした。吉田家は日本有数の雄藩「毛利藩」の軍学師範の家柄です。


 馬鹿正直で、猪突猛進、常に高い理想に燃え、頭が良いのに短慮な所があり、言動にも、行動にも、ある意味一貫性が無く、いろんな人を振り回した人物でしたが、一貫していた事は「誠」でしょう。海外渡航を企てるも、ペリーに断られて願いが適わなかったのでしたが、そこで凄いのは「黙って姿をけしてくれれば奉行所に訴えで無いよ」と親切な役人に逃げるよう進めれたのに、奉行所に自首してしまうのです。鎖国当時の事ですから当然重大犯罪人として逮捕投獄されます。この事件の際の偽名が「瓜の内万字」だったと伝わっておりますが、この人の行いには「ギャグ?」と見まごうばかりの滑稽さと、人の心を打つ高潔さが同居してます。


 また、結構負けず嫌いで、しかも酒を飲んでクダを巻くという面もあったようです。思想的にも一貫性が無く、尊皇攘夷の急先鋒であるかのような言動もすれば「草莽屈起」などといい、幕府も朝廷もいらん。といったりしていますが、要するに冷静に考える暇も無いほど必死で全力で生きていたんだろうなあと思っています。で、「アメリカに渡って世界を知りたい。」といって海外渡航を企てたという事を、尊皇攘夷思想の友人とかに突付かれたからでしょうか、「あれは、ペリーの暗殺のために乗船したんだ、攘夷決行の為の言い訳で言ってみただけ」みたいな苦しい言い訳をしたようです。
 後の明治政府の中心人物となる伊藤博文や山県有朋らといった、身分の低い階層の出でありながら国の発展に大きく貢献した人物達に、その活躍の基礎となる「教育」行った。ということで歴史の教科書に載っているのですが、言ったことややった事が色々に無方向状態ですので、影響を受けて活躍した人たちの業績についても、評価は賛否が分かれるところです。・・・


 この人について思う所は、なにより「至誠」を持って貫こうと、心の底から考え、思い、其れこそ一秒一秒に全力をかけて、誰一人として先行きの見えない激動の時代を「魁けて」突っ走った事への共感です。自ら「狂ってる」と行っていただけあって、雑念が全部飛んでいます。純粋な真剣さと、純粋な優しさがあり、温かな人間性が伝わってくる気がします。
 真剣で誠実、熱く純粋な若者のなかの若者、「瓜の内万字」君、嘘が嫌いで、正直に本当のことを言ったばかりに死刑判決を下されて斬首されても後悔が無かったかれが、親孝行もので、礼節を重んじる彼が、自らに連なる大切な由緒と意義が込められた吉田家の「家紋」を偽名に用いたのは、自らを偽らない為の最大限の努力だったのでしょう。紋章というものは図であり、文字に似たものであります。文字同様形であり型であるわけですが、文字が文法に従って綴られる事で情報を伝達じ、更には感情や心、思いを伝えるのに似て、紋章にも願いや思いや祈り、更には歴史を込める事が出来るのだと、また、この例のように家々に、また広く世に伝えられてきた紋章には、有形無形の気持ちや、願いの歴史が込められているのだと初めて思い知ったのが、この紋との出会いであったので一番目としました。



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