春の隠れ谷

 春の隠れ谷は、まずは「ふきのとう」でしょうか、藤村先生が「緑なすハコベは萌えず 若草の籍くによしなし」と詩に書いた頃には半分凍った土から頭をもたげています。そして、イヌノフグリが咲くと一気に色々な植物が花を咲かせます。私の記憶では、梅・桃・桜・スモモ・林檎・梨と言う順番で・・・?(植えた場所の標高にもよるので順番はあまり正確ではありませんが)次々に咲きます。


 谷に植えられる果樹は主に梅と柿なので、花の咲く様子は華々しいものではありませんが、このあたりの農家の庭先には「花桃」がよく植えられており、また、斜面に躑躅、枝垂桜、山桜が自生している事も多いので、じっくり眺めているとなかなかに味わいがあると思えてきます。また、谷に付き物である川の近くを歩けば、運が良ければ「座禅草」や「片栗」と言ったような、図鑑でしか見られないような野生の美しい花と出会うこともできます。


 春は、様々な山菜の季節でもあります。蕗の塔、芹、こごみ、うど、たらの芽、よもぎ、竹の子、といった順番でしょうか・・これも山を登っていけば時期がずれる事もあってあくまで私の記憶の中での順番です。個人的に特に好きな山菜は「うど」です。崖のへり、常に崩れかけているような場所に生えている植物ですが、これの新芽のてんぷらは、知っている限りの山菜料理の中で一番美味しいです。



春も終わり頃、田植え直前の田んぼと赤のどうだんつつじ↑


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