其の一
 十二支やら正月やら・・・
 正月飾りの季節がやってきました。「どこがや?」と言う声が聞こえてきそうですが、年末近くなってから作っていたらまるで遅いわけでして、ちょうど今くらいから作り始めるのです。
 さて、このサイトでも宣言したとおり、オリジナルの新作正月飾りを作ろうと意気込んで試作をつくってリアノン他いろいろな人に見せたのでありますが、私にとって水引の正月飾りは「イセエビ」あってこそのものなので、来年の干支の酉(にわとり)と一緒に、水引で作ったイセエビをでかでかとつけたのであります。
 「飾り海老水引長く結いにけり」風伯
 江戸時代の俳句に現れる水引結びにおいてもひげの長い海老とセットなのです。水心にとっては海老なしは考えることもできなかったのでありました。しかし、周囲の反応は全く違っておりました。「海老が要らん」、「海老は余計だ」・・・そんな正月飾りは売ったことがない・・・。売り場に出るようになってやっと一月あまりの水心の痛いところを付いてきます。「せっかく立派な俳句まであるんだし」と反撃を試みると「じゃあにわとりだけのと海老だけの二通りにして」と締めくくられてしまいました。まぁ、自分のセンスの現実社会とのズレっぷりは否定できないし、その通りにしようかなという感じであります。
 ところで十二支であります。売り場に出てみて実感したことは自分の干支に関するこだわりであります。お客様の中に必ず自分の「干支もの」をほしがる人がいるという事であります。コレクションしていらっしゃる方も多く、「すみませんそういうものは無いです・・」と言うと大変がっかりされてしまいます。それで頑張って十二支ものを作ることにしたのですが、同じ価格でねずみと竜をつくると言うことのとんでもないややこしさ・・・悪戦苦闘でありまして、一応できたのはウサギと来年の干支のにわとり、そろそろ完成しそうなのがひつじ、とら、うま、あたりであります。
 で、お店でお客様の少ない時間にそれらの試作を並べて眺めては手直しをし、としておりましたらふらりとやって来た感じの個人のお客様(バス等でいらっしゃる団体のお客様と区別してそう呼ぶ)が私の前に立ち止まって、「これは?」と試作のとらを指差して訊ねるので、「十二支の・・」と話始めると「ジャガー?」とおっしゃりかけてから、「あぁ、とら年の寅ね」というのです!。 話をお聞きしたところメキシコで暮らしておられるとのこと、二・三年に一度日本に帰ってくるそうで、家の中では一応日本の十二支なのだそうですが、メキシコにはメキシコの十二支があるそうです。日本中津々浦々からお客様がいらっしゃいますが、メキシコとはあまりに意外な場所でありまして、とても驚きました。十二支は世界中にあり、文化圏ごとに異なっていると言うことは本では知っていたのですが、実際の経験で実感したのは初めてのことで、とても新鮮な驚きでありました。とはいえ十二種類もの動物をやっとこさっとこ形にしたばかりで、「他の国の十二支もやるぞー」というノリにはなれなかったせいか、メキシコの十二支を聞くのを忘れてしまっていたのでありました。で、今になってなぜ聞かなかったのかと大後悔・・・聞く機会が次にいつあるのか分からないし、googleで検索しても見つけられ無かったし・・・ジャガーは入っているのだろうか?とか色々考えるともう気になって死にそうです。誰か知ってたら教えてください。

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 by水心