其の十一
 日本食研長野支社様からの御注文・・・
  日本食研様といえば、たれの最大手であります。その日本食研様の長野支社様から、あの焼肉のたれ晩餐館のCMでおなじみの牛のキャラクター「バンコさん」を水引細工にした物を作ってほしいという連絡を受け、実際に社員の方もいらして見積もり等の相談をし、支社長様から正式な発注を受けたのが、納期の三週間前というなかなかにタイトなスケジュールでありましたが、なんと言っても光栄な話でもあり大変に気負って製作に取り掛かった水心でありました。
 絵師が下絵のサンプルをつくってプリントアウトし、サンプルデザイン画を使って配色を決めるサンプルを作る、そういった作業は主に家ですませ、「よしこれで行こう」という決定稿と配色の決定をして、いざ本製作というわけで、意気込みつつお店で製作を開始したのでありましたが、御来店のお客様に家紋の説明をすると、私の手元にある作りかけの「バンコさん」を見つけては、「あぁ!これあの「焼肉やいても家焼くな」の牛だぁ」と必ずお声がかかり、それで大急ぎで特別注文での製作であることを説明させていただくのですが、お客様方は口々にあの晩餐館のCMの歌を歌い始めてしまうのでした。
 結局作っている間中頭の中は晩餐館の「焼肉やいても家焼くな」が回っておりました。それにしてもその知名度と、その人気の高さは想像以上の物で、自分が手にしている題材の偉大さに気おされそうになりながら必死で製作することとなりました。心底緊張しましたし、また、その偉大さに見合う製作をと意気込み、試行錯誤した中で、「バンコさん」のデザインに込められたテーマや、日本食研様の仕事の素晴らしさに触れることができ、本当に内容の濃い、製作者冥利に尽きる仕事となりました。
 注文を下さった事だけでも光栄であった上に、製作にまつわる雑多なことについてさまざまに協力してくださった支社長様ほか日本食研長野支社の皆様には心から感謝しております。
 「バンコさん」を納品するために額に収め、梱包用の箱に入れていたところを見たリアノンが、「そんな寂しそうな顔して別れがつらいの?まるで娘を嫁に出す父親みたい」と言っておりました。正直今の水心にとっては「わが心のバンコさん」であります。水引バンコさんは、日本食研様、愛媛本社9F日本食研歴史観におるということでありますので、自分もまた愛媛に行く機会があったら是非とも再開を果たすべく訪ねたいと思っております。

 戻る
 by水心