赤沢のおんばさま

    赤沢 おんばさま


 村はずれ、上村境の赤沢集落から十五分ほど登ったところに、大木に囲ま
れてトタンふきの

小さなオチョウヤ(祠)があります。子どもが授かります
ように、母親の乳がよく出るように

とお願いした「おんば(姥・乳母)さま」
と、地元の人たちが親しみをこめてそう呼んでいる

産神
(うぶがみ)です。

産神・姥神信仰は、出産の前後を通じて妊婦や乳児を見守ってくれる神として、呼び方、

まつり方など違いはありますが、それこそ日本各地にあります。             


そのひとつに、姥石
(うばいし)の伝説があります。

 昔、ある女性が女人禁制を犯して霊山に登ろうとしたところ、石になってしまったという

もので、名山と呼ばれる山麓にはよくこの石がまつられてい
ます。古くから、石に霊魂が宿

るという考え方があり丸い石や臼に似た石な
どを霊石として崇敬していました。

 また、子授け・安産・子育てを祈願する神に、箒神(ほうきかみ)・便所神・道祖神・子安神・

山の神などがあり、お礼参りに底の抜けた柄杓や小石を供える風習が
あります。

 赤沢のおんばさまは、最初、古瀬直義さんの祖先がまつったものということですが、最近

はこのような産土神
(うぶすながみ)に対する信仰心が薄くなり、お参りに行く人もいません。

 周囲の木々は年輪を重ねますます大きく成長していますがおんばさまのおちょうやは竹の

子に床を抜かれそうになったこともあるとか、傷みが激しく
なっています。

 赤沢 おんばさまの森

次の作品へ