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新婚家庭での御祝棒 |
上村上町では毎年一月十四日前後の夜から未明にかけて、御祝棒が行われます。
これは子孫繁栄と家庭円満、五穀豊穣を願う行事で、中学生以下の子どもたちが新
婚家庭に行き、縁側や玄関先で祝い棒で叩くというものです。
上町ではこの棒は男性を象徴するものといわれており、五十センチほどのクルミ
の若木を削り掛けにしてつくります。
午後七時ころ、子どもたちが祝い棒を持って正八幡神社に集まります。
太鼓にあわせて「参った、参った、御祝棒が参った。参った、参った、御祝棒が
参った。」と歌いながら新婚家庭に向かいます。
新婚家庭では親戚が集まり祝宴を開いて待っています。
新婚夫婦は正座して出迎え、子どもたちは「参った参った」と縁側を激しく叩きます。
酒の入った大人たちは「もっと叩け、もっと叩け」とはやし立てます。
訪問された家庭では子どもたちを歓迎し、ご祝儀を与えます。
新婚家庭を回り、町中を歌いながら練り歩きお宮に戻り、お宮でも同じように
はやし立て叩きます。
このあと中学生の男子はお宮に泊まり、午前三時ころ再び町内を練り歩きます。
以前は十四日夜にお宮にこもり、十五日の未明から町内や新婚家庭をお祝して
回りました。
この祝い棒というのは、小正月を中心にめでたいまじないなどに用いられる神聖
な棒の総称で、クルミ、栗、桑、ヌルデ、ニワトコ、柳など柔らかい木で作りますが、
子どもが授かるようにと嫁たたき棒、ハラメンボウなどと呼ぶところもあります。
また形状も、ただの棒であったり、ささら状、装飾を施したもの、上村のように削
り掛けといろいろあります。
削り掛けとは、クルミやヌルデなどの若木の皮をはぎ、何度も小刀などで棒の端近
くまで削り、その形状が花のようになるものでケズリバナ、ハナ、ハナキなどとも呼
ばれています。
川上村にオカタブチという同じ行事がありますが、長野県ではたいへんめずらしい
伝統行事といえます。
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