子どもの遊びと方言

 

「うっとくれ」

 店に買い物に行くとき「うっとくれー」といって店に入ったものです。

 これは、店に黙ってはいるのではなく「こんにちは」というところを、「売ってください」

といったもので、たいへん丁寧な言葉だと思いますが、@きょうび聞くことはありません。

 

「いじゃー」

「たーちゃ、あんばんかー」といって「川へ、いじゃー」と友達を川に誘います。

「たーちゃ」というのは、人の名前に親しみを込めた「ちゃ」をつけたもので、

「あんばんかー」は遊ぼうというもので「あんび」「あんぶ」「あんばまい
か」とかいう使

い方もありました。「いじゃー」は「行こう」という意味で
「いずこへいずる」のいずるか

らきているのではないでしょうか。

 今では、「行かんかー」とか「いかまい」「いってこんか」とかいうのを聞きます。

 そして「あばなー」といって別れました。

 

「われ」

「かーら」でこどもが「われ、なにょーとろくさいことしとるよ、さっさとみとからぼい

たくれ」と、Aでけーこえで叫んでいます。

子どもたちが川でBトーバリッコ採りをしているところで、ひとりが川岸の浅瀬で手ぬぐ

いを広げ、友達にあかうおの子を本流から追わせ、さらいこんでいたところです。

「みと」は本流のこと、又は川の流れの中心のこと、「ぽいたくれ」はぼったくれともい

い、追いたてるという意味で、「ぼいかける」となると追いかける
ことになります。

 今では「君」とか「貴方」のことを「われ」とはいいませんが、以前は「おい」「やい」

「いえー」「わりゃー」もっときつい言い方では「こりゃー」とか
いったものです。

また「わとう」というと君たちとか、あなたたちとか複数を
指す言葉になります。

 トーバリッコを生きたまま飲むと、水泳がうまくなると子どもらには信じられており、

Cおまたをほしたりしてトーバリ採りをしましたが、D
だだくさもなくとり過ぎ、しまいに

はEびちゃってしまいました。

 

「つる」

 学校で掃除の時間、「その机をつってくれ」といえば、持ち上げてくれということです。

掃除は遊び半分で、ほうきでちゃんばらをしたりしてFおこびて先生に怒られたものでした。

 

「かくし」

 昭和二十年代は食料難の時代で、柿の皮の干したものが唯一の甘いお菓子で、いつも

「かくし」に入れていました。かくしとはポケットのことです。

 そのころの子どもは皆、青鼻を垂らしており、服の腕の部分はてかてかに光っていました。

 あのころはティッシュもなく鼻をかむという習慣がなかったのでしょうか、今は青鼻を垂

らしている子どもを見たことがありません。

 

「のす」

「のす」とだけいわれると分からないかもしれませんが、「子どもが木にのしている」、

あるいは「おいは、あの柿の木のうらっぽまでのせるかよ」とか
いったもので、木に登るこ

とです。子どものころはよくGこっぱいこいて
にのしたもので、柿の木はもろく折れやす

いとか、クルミの木は滑るから雨
の降った後にはのすものではないとか、遊びの中で学んだ

ものでした。

@ きょうび        今では、今日、または近頃

A でけーこえ       大きな声「でけー」とは大きなという意味

B トーバリッコ      川魚、おもにアカウオの稚魚

C おまた         川の水を止め、流れを変えて魚を取ることおまた干しという。

D だだくさもなく     たくさん、むだに。

E びちゃって       捨てることをいう

F おこびて (おこびる) ふざける 

G こっぱいこいて     苦労して

次の作品へ