子安さま

池口子安さまに奉納されている、底を抜いたひしゃく。
”無事男子出産ありがとうございました”と書かれていました。


 旧南和田小学校体育館(現在は高蔵工業が利用)の裏の遠山川へ突き出た
がけっぷちに、

新しく小さな子安さまがまつられています。

 数十年前までは、和見地区の住民全員でまつっていましたが、いろいろな事情によって

放棄され、いつの間にか朽ち果ててしまいました。

 ところが六年ほど前に、このがけで転落して大ケガをした人がありましたが、命があった

のはここにあった子安さまのお陰と、小さな祠を建てまつり
ました。

 池口にも子安さまがあります。

 池口の子安さまは、牛肉センターの裏山を十分程登ったところに屋敷跡のような平があり、

その少し高くなったところに社があります。社とはいって
もトタンふきの屋根に柱だけの質

素なもので、その中に小さなオチョウヤ
(祠)がありまつられています。子安さまは、何年

も人が訪れた様子のないほ
どにこわれかけ、痛々しい姿になっていましたが、「昭和六十三

年、無事男子
出産ありがとうございました」と書かれ、底が抜かれたアルミの柄杓(ひしゃく)

が供えられていました。

 霜月祭りにも子安さまの面があるように、子安さまは古くからいろいろな形で信仰されて

おり、安産、子授け、育児などの祈願をする神様で、木花咲耶
(このはなのさくやひめ)を祭

神とする神道系の子安神社と、観音、地蔵などと結びついて、子安地蔵、子安観音と呼ばれる

仏教系とがあります。                 

地方によっては、講を行っている所もあり、子安信仰は全国に分布しています。

 此田などで信仰されている「おしゃぐじさま」のように、自然石をまつっている所もあり、

海や山から拾ってきた石を、子安石、子得石
(ことくいし)と呼び、子どものない人は、毎日お

がんだり身につけたりしたといわれています。

 参考

 子安さまに底のあいたひしゃく(昔は竹で作った)を奉納する習わしは全国広く分布しています。
なぜひしゃくなのかと言うのは、北斗七星のひしゃくの
形からきているもので、天白信仰と深い関わり
があると言われています。
また、子安さまは名田熊、川合、上村大野などにもあり、多くの信仰を集めていました。

    池口 子安さま 林の中にひっそりと佇む 池口子安さま

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