上村・的場稲荷神社の初午


  毎年初午の日、上村風折地区にある的場稲荷神社で初午祭りが行われます。

十数戸の小さな集落風折は、上町と中郷の境の山肌にあります。

的場」とは、昔この地方を治めていた遠山土佐守が、対岸に向かって弓を引いた

ところからこの名がついた、と言い伝えられています。

  祭りは、前日に宵祭が、翌日の本祭は昼ころから「座ぞろえ」が行われ、神

により御神酒が供えられ、六根のはらいなど各種のおはらいが行われます。

 神前にはおいやし(お白餅)が供えられ、庭には神の依代「おわき」が立てら

れます。


 ひととおりの神事が終わると、四人が鈴と扇を持って舞う「四つ舞」が奉
納さ

れ、続いて大黒さまと蚕玉さまの面が登場します。

太鼓と笛に合わせて大黒舞の歌が歌われ、大黒さまがおもしろおかしく舞い、

その後ろを、女の衣装をした蚕玉神がしずしずとついていきます。ひと舞して終

わり、そのあとは鍋を囲んでの楽しい直会です。

 各地で初午祭りが行われますが、稲荷は「倉魂神稻」(うがのみたまのかみ)をま

つったもので、本来は田の神すなわち農業神であるといわれています。

 この的場稲荷神社は、養蚕の守り神である蚕玉信仰と、福の神大黒天信仰とが

結びついている、稲荷信仰の原初的形態を残している貴重な祭りといわれています。

        風折 大黒さまと蚕玉さま          神官によるおはらい

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