地搗唄(じつきうた)

 此処は大事な大黒柱え

心揃えておつきやれ

  おつきやれ

セノナー、ヨンヤラサノー

 アレワイサノセー

ソラヨンダショー

 ソラヨンダショー


 これは南信濃村で祝いの席で歌われる歌のひとつ『地搗唄』ですが、もとは、新築屋敷の

土台石の地固めのとき唄われた仕事唄で、ヨイトマケノの唄
もそのひとつです。

 和田では大正八年・十一年の二度にわたり大火があり、新築工事が続きよく唄われたとい

うことですが、コンクリート基礎になってからだんだん唄わ
れなくなり、最近は滅多に聞く

こともなく、唄える人も少なくなりました。

 鈴木甲子好さん。大正六年生まれ。

 数少ない、地搗唄の名手の一人です。

 鈴木さんがとうとうと唄う地搗唄には哀愁があり、仕事唄というより祝い唄というほうが

ぴったりです。

 十数年前、上村役場で発売されたカセットテープ 『遠山谷の祭り唄』(絵島踊りなど十

七曲収録)には、上村で唄われていた『地搗唄』が収録されています。

後藤総一郎先生は、「わたしたちは、己白身の人間としてのやさしさをとりもどし養うため

に、限りなくこの祖先の「ウタ」を愛し伝承してゆきたいも
のと念じている」と、遠山谷に

伝わる盆踊り唄の保存と伝承を訴えております。

いわば作業唄である「地搗唄」や、「木やり唄」あるいは「ノーサー」「源吾兵衛」などか

らは、遠い祖先の感情と歴史が感ぜられ、何とか保存しなくて
は、と思います。

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