蜂と蜘蛛と蟻と財布




 
  蜂と蜘蛛(くも)(ありご)の三人がある日お伊勢参りに出かけた。

だんだん行くと其の途中に財布が落ちて居った。

急いで拾って中を覗いて見るとお金が一ぱいに入って居る。
其所(そこ)で三人でそのお金を分ける事になったら、てんでに慾が出て、

「此れは俺が見付けたんだ、イヤ俺が拾ったんだ」と喧嘩を始めた。
そのうちに
(ありご)

「待て待て 喧嘩したっても
(らち)が明かん、俺がうまく分けて見せるでまあ俺に任かして置け」
と、
()う云って置いて、
「蜂は八文で
蜘蛛(くも)は九文と、いいか、其処(そこ)でこの俺は(ありご)だからありったけよ」
と云って財布さら自分の
(ふところ)へ入れてしまった。

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