蛇 と 蚯蚓

 

 
 蛇と
蚯蚓(めめず)は昔は大へんに仲の()い友達だった。
二人とも土の中を(もぐ)って遊んで歩いて居ったが其の時分は蚯蚓(めめず)には眼があったが蛇は
盲目
(めくら)
だった。

その盲目の蛇は歌が上手で、とても良い声で毎日毎日歌をうたって居った。

蚯蚓(めめず)は歌が大へん好きだったけれど歌う事が出来なんだ。

 ある日二人は土の中でパッタリ行き会った。

そしていろいろと身の上話しをしとる
(うち)に、蛇は

「眠が見えんのが一ばんに悲しい、眼さえ見えりゃあ(ほか)には何にも入らん」と云う。

すると蚯蚓(めめず)は「(わし)は眼やなにか()しかあないが、良い声で歌って見たいもんだ」と云う。

「それじゃあ二人は眼と歌とを交換(ばく)ままいか、そうすりぁやお互に仕合(しやせ)になれるに

違いない」

と相談がまとまって其の場で二人は眼と歌とを
交換(ばく)った。

 眼を貰った蛇は嬉しくて嬉しくて、もう暗い土の中にゃなに居る事が嫌になって、

土の上へ這い出して来たのに、
蚯蚓(めめず)は歌が好きだもんで、

相変わらず昔の通り土の下に
(もぐ)って、毎晩のように良い声を出して歌って居った。


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