祿神の話

 

 
  福祿神(ほくろくじん)が、或る日旅に出かけた。

日が暮れたので、百姓家で一と晩泊めてむらう事になった。
 所が福祿神の頭があんまり長いので、方々へ(つか)えて困っちまった。

仕様がないもんで、壁へ大きい穴を明けて、其処から外へ頭を出して
それでいい気持ちで寝て

居った。

 すると近所の人が通りかかって、
「此れは珍らしく長い大きな冬瓜(とうがん)だ、
此れを(わし)に売っとくれ、値段は幾らだ」と云う。

 それを聞いた福祿神は「此れは冬瓜じゃあない、福祿神だ」と云うと、

その人はそれを聞き間違えて、

「何に 百六十文だ、そりゃあ高すぎる、もっと負からんか」と云う。

 そうすると福祿神は「曲がらんで斯うして頭を出して寝て居るんだ」

と答えた。

 
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