ほととぎす |
ある山ん中に時鳥の兄弟が住んで居った。
兄の時鳥はづくなしで、一日中寝てばっか居ったが、弟の時鳥は順しくて、づくがよくて、
毎日毎日山を飛んで歩いて稼いで居った。
そうして兄さんの好きな山の芋を目っけて掘って来て、其の一番まん中の美味しい所を兄
さんに食べさせて、自分では両端の筋ばっかの所を食べて居った。
兄さんの時鳥はづくなしの癖に疑い深くて、
俺に食べさせるお芋が此んねに美味い所を見ると、弟の奴め、自分ではまっと美味いとこを食べとるに違いない、憎い弟奴ちゅって、可哀相に弟を殺してしまった。
そうして腹をさばいて見たら、そん中からお芋の筋の所ばっかり出て来たので、
漸っと弟の正直だった事が分かり、自分の今迄仕た事が悪るかったと気が付いて後悔して、
それからは夜半になると、「弟恋し 弟恋し」と悲しい声を出して、
弟を呼ばって鳴くようになったんだって。