節の穴と火伏せのお札

 



 むかし山家(やまが)の馬鹿な婿様が里の方から嫁様を貰った。

或る日その父親がその婿様を連れて嫁の(うち)へ行く事になったが、

馬鹿な婿様だもんで父親は心配して、
先方(むこう)の家の座敷へ坐って、若し柱に節の穴でもあったら、その穴の(とこ)へ火伏せの
(ふだ)を貼ったらいいに」と云うようにと教えて連れて行った。

 さて愈々嫁の家へ着いて座敷へ通ると、丁度床の間の柱に節の穴のあるのが見付かった。

 婿様は家で教わったのは此所だと思って
()の穴の(とこ)へ、火伏せのお札を貼ったらいいに」と云ったので、

「此れは利口な婿様だ」と云って皆に大へんに賞められた。

 いろいろ御馳走になって家へ帰ると云うと、嫁の家の方では

婿様のお帰りだ」と云って、馬で送って呉れた。
 その途中で婿様は馬の目の所を()して、
「此の穴の(とこ)へも火伏せのお札を貼るといいに」と云ったので、

とうとう化けの皮があらわれて、
 「矢っ張り馬鹿婿様だ」と云って笑らわれた。

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