片っぽっぽ

 



 或日、鶴と雁とが路で行き遇って、

「どうだ一つ何所(どっ)かへ行って一杯飲んで来まいか」


「ウム(うち)にばっか居っても面白くないでそれがよからず」

と相談が出来て三人揃って遊びに出かけた。

そうすると田圃のくろでそれきいとった蛙が

「俺も一緒に連れてって呉りょう」と云うもんで 
                                          「そいじゃあ一緒にに行かまいか」と云って、四人でお茶屋へ上って酒を飲んだ。

飲んどる中に段々酔って面白くなって来た。

「一つ歌っちゃあどうだ」と云う事になって、

鶴が「よしそれじゃあ一つ俺が三味(しゃみ)をひかず」と云って長い首をふって

「ツルンツツン オヤ ツルンツツン 」とやると

雁もたまらん様になって

「ガンガラガノガン オヤ ガンガラガンノガン」て囃し立てる。

そうすると鳩が「ハットセ、ハットセ」と掛け声を掛けて、(みんな)面白がって遊んで居った。

そいだけえど

蛙は(なん)もせずに、大きな目をパタッパタッとさせて(みんな)のする事を見て居った。                                           
そうした(とこ)(みんな)で「何かやれ」と云うので、仕方なしに


「ゴケッゴケッ ゴケッゴケッ」と鳴いて見たが、へぼい声だったもんで恥ずかしくなって

「俺あ先い帰る」と云って帰っちまった。

そいからはあるかたって、(みんな)もいよいよお帰りちゅう事になって、

門口(かどぐち)へ来て見ると、鶴と雁の履き物はあったけれど、

鳩の麻裏を片方(かたっぽ)蛙が履いて帰ってしまって、蛙の泥だらけの草履が半分残って居ったんで

「蛙の奴め草履をばくんで行きやあがった」と鳩は(おこっ)て見たけれど、

仕様ないもんで鳩は片方(かたっぽ)の麻裏を履いて、

しんごろをかきながら「片っぽっぽー、片っぽっぽー」と鳴いて帰って行ったって。

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