獺 と 狐

 

 
 雪が大へんに降って寒い晩に、狐は「尻がしもげるスココンコン」
と鳴きながら山の方から

下りて来た。

 おなかがへったので、何か食べる物はないかと歩いて居ると、向うの方から(かわうそ)が魚を

喰わえてやって来た。

それを見て(かわうそ)に「お前はいい物を持っとるなあ、わしに半分呉れんか」

と云うと(かわうそ)

「いいとも それじゃ二人で半分こにして食べまいか」
と云って半分づつ分けて食べた。

「こんな魚をお前はどうして()ったか」と狐が聞くと、

(かわうそ)は「そりゃあわけはない彼所(あそこ)の池の氷の上へ行くと穴の明いた

所があるで、其の穴へ尻尾(しっぽ)を垂らして居ると魚がそれへ食い付く、尻尾へ

こつこつと何か当たるのは魚が食い付いた証拠だ」と教えて呉れた。

狐は早速其の池へ行って見ると、成る程(かわうそ)の云ったように

穴の明いた
(とこ)があった。

 狐は此所だなと思って、教わったように其の穴へ尻尾を垂らして居ると、

そのうちに何か尻尾へこつこつと当たる、「そりゃ魚が喰い付いた、

一つじゃあつまらん、幾つもいっしょに捕ってやらず」と思って、

じっと寒いのを我慢して居ると、幾つも幾つもこつこつとさわる、

狐は嬉しくて嬉しくて、それでも我慢をして居ると鶏が啼き出した。

「もうよからず」と尻尾を引き上げっと思うと、お尻がすっかり凍り着いてしまって居る。

狐はびっくりして、一生懸命に抜かっとして(りき)んで居る所へ

お神さんが水汲みに来た。狐は「こりゃたまらん」と周章(あわ)てて居ると、

お神さんはそれを見てびっくりして、大声を出して村中の人を呼ばった、

(みんな)はてんでに棒や木ん切りを持って集まって来て、

とうとう狐をたたっ殺して
食べてしまった。

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