或る田舎者が京へ三味線を買いに行った。
町の人に道を聞いてだんだんそっちの方へ行って見ると、 いいあんばいに三味線や琴を売っとる店が見つかった。 喜んで其の田舎者が其の店の前(まえで)へ行って見ると、 仮名で書いた大きな看板が立ってあった、読んで見ると ことしやみせん所 と書いてある。 田舎者は力を落して 「今年しゃ見せん所か それじゃあ又来年来(こ)にゃあ駄目かな」
と云ってすごすごと帰って行った。 次の作品へ