継っ子とほんの子 |
むかし継っ子とほんの子とあった。
継母は二人を栗拾いにやった。
継っ子にはしった(底)の破れたびくをやり、ほんの子には新しい丈夫なびくをやった。
そして「其のびくへ一ぱいづつ栗を拾って来い」と云ってやった。
二人は山へ行って、栗を拾ってはびくへ入れ、拾ってはびくへ入れて
居るうちに、ほんの子の方はいいびくだもんで、じきに一ぱいになった、
それで先きへ家へ帰ってしまった。
継っ子の方はいくら拾っても拾っても、びくが破れておるもんで、一寸も一杯にならなんだ。
そのうちに日が暮れてしまった。
継っ子は悲しくなって泣きながら向うの方を見ると火が見えたので、
その方へ行って見ると一軒の家があって、其処に婆様が一人で糸をとって居った。
継っ子はその婆様に訳を話して泊めて貰わっとしたら、
婆様の云うことに、「此処は鬼の住み家で、今は皆山へ行って居るが、おっつけ帰って来る。
帰って来て見付かれば直ぐに食べられて終うで、
此れを被って庭の隅っこに隠れておいなんしょ」と云って隠れ蓑と隠れ笠とを呉れた。
娘は其れを貰って庭の隅に隠れて居ると、其のうちに山の方から
ガヤガヤ云って大勢の鬼たちが帰って来た。
そうして家の中へ入ると直ぐに「ああ人臭い、人臭い、婆様、誰か人が来りゃあせんか、
ああ人臭い、人臭い」と云って、家じゅうを捜して歩いた。
娘は隠れ蓑と隠れ笠を被って隠れて居ったもんで、とうとう目っからずに居った。
婆様は、「何で人や何か来るもんけ、それよりか今夜はもう遅いし、おっつけ
一番鶏の啼く時刻だで早く寝よ」と云って寝床の中へ鬼たちを追ってやった。
其のすきに婆様は娘に早く逃げるようにと教えてやったので、
娘は其の隠れ蓑と隠れ笠を被って家を逃げ出した。
そうしてとうとう命からがら家まで逃げて来た。
お殿様は継っ子の娘が隠れ蓑と隠れ笠と云う珍らしい宝物を持って来たと云うので、
娘を御殿へ招ばって大へんに賞めて、娘はお殿様からいろいろな
御褒美を沢山に貰い申したと云う話だ。
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