| 継子と苺の実 |
ある所に継子のお千代と、ほんの子のお花と云う二人の娘があった。 継母は姉のお千代が憎くて憎くて仕様がなかった。
冬でとても寒い日に、お花は母親に「赤い苺が食べたい」と強請んだ。
そうすると継母はお千代に「お前此の籠を持ってって苺を一っ杯採って来い」と云い付けた。
お千代は籠を抱えて寒いのに足袋も履かず、素足に草履を履いて出て行くと、
山にはもう雪がチラチラと降って居った。
雪は降るし、寒さは寒いし、お千代は歩き疲れて雪ん中へ倒れてしまった。
そうして居ると其のうちに、誰だか「お千代 お千代」と呼ぶ声が聞える。
気が付いて見ると髪の毛の眞っ白いお爺さんが其処に立って居る。
そうして「お千代お前は何を探しとる」と聞いたので、お千代は
「お母様の云い付けで、苺を探して居ります」と答えた。
そうしたら其の白髪のお爺さんは
「お千代 此方へおいで」と云って先きへ立って行く。
お千代が其のお爺さんの後について行くと、向うの方の雪ん中に赤い苺が
それは美事に沢山生って居る。
「さあ此れを採ってお帰り」と云ったかと思うと、
其のお爺さんは何処かへ消えて行ってしまった。
お千代は白髪のお爺さんのお陰で、苺を籠へ一っぱい採って帰って行つたら、
継母と妹と二人で美味そうに其の苺を食べながら、
採って来たお千代には一と粒も呉れなんだ。
お花は「今度は紫の苺が食べたい」と、無理な事を云い出した。
「採って来にゃあ家へ寝かさん」と云うもんで、お千代は仕方なしに
又雪の路を紫の苺を探しに行くと、又此ないだの白髪のお爺さんが立って居った。
お千代は其のお爺さんに、「紫の苺を採って来い」と云われた事を話したら、
其のお爺さんは大へん腹を立てて、「此の世に無いような紫の苺を採って来いなんて、
そんな非道い事はない、今度は俺が思い知らせてやる、
其の苺のある所へ連れてってやるから来い」と云うので
ついて行くと、向うの雪の降る谷に紫色の苺が一つぱいに生って居った。
お千代は其の苺を採って籠へ入れて、それを持って帰って行くと、
今度もお千代には一つ粒も呉れすに継母親子が二人っきりで食べてしまった。
そうすると二人は俄かにお腹が痛くなって、苦しみ出して、とうとう二人共死んでしまった。
躰が紫色になって居った。
紫色の苺は毒苺で、そんな非道い事をする継母親子に神様が罰を当てたのだった。
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