長くてこわい話

 


 其の一

むかし天竺(てんじく)から長い長い(ふんどし)へ こわ飯を包んで

ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる

ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる ずる

ずる とおろして呉れたと云う話。


 其の二


 昔ある所の殿様が話好きで、毎日家来達を呼んで面白い話をさせたけれど、

どれも話が短かすぎて一向につまらなんだ。

 それで「もっと長い話を知って居る者を連れて来い」と云う命令だった。

するとある日家来が長い話を知って居ると云う男を連れて来た。

その男は殿様の前へ出てこんな話を始めた。

 昔あるところに大きな米蔵が三万三千三百三十三棟あった。

そこへ(ありご)が一匹這入りこんで、米を(くわ)え出し初めた。

「先ず一粒(ひとつぼ)づつくわえては、

出たり入ったり、出たり入ったり、入ったり出たり 出たり入ったり、

入ったり出たり 出たり入ったり、出たり入ったり、出たり入ったり

出たり入ったり、出たり入ったり 出たり入ったり 出たり入ったり 

出たり入ったり    」 

と同じ事を何時までも繰り返して居った。

 そして三日三晩も出たり入ったりを喋舌(しゃべ)りつづけた。

お殿様もあきれて「大分(だいぶ)米を運んだ様子じゃが、どれ位蔵の米を運んだか」

とお訊ねになった。

 するとその男の云う事に

「まだ まだ 第一の米蔵の三尺四方を運んだばっかで、話はもっとこれからでございます」

と答えて、

「出たり入ったり、入ったり出たり」とのべつに喋舌(しゃべ)くりつづけて行くので

流石に長い話の好きなお殿様もとうとう(かぶと)を脱いで

「もう其処らでよせよせ」と云った。

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