(ねずみ)の嫁入り






 ある
(とこ)に、親娘(おやこ)三人のねずみが住んで居った。

親たちは娘が大きくなったもんで、何所かへ嫁らっせと思ったが、

鼠の仲間にはちょうきゅうな奴は居らんので、もっと(えら)い所へ

嫁らせっと思って、「何処がいいか知らん」と親たちが相談して居った。

 「マア此の世の中ではお天とう様が一番豪いで、彼所(あそこ)へ嫁らせるか」と云った。

 そのうちに雲が出て来て俄にお天とう様を隠してしまったので、

「一番豪いと思って居ったお天とう様の邪魔をする位だから

雲の方がまっと豪いにちがいない、其処へやるか」と云った。

そのうちに風が吹いて来て雲を何所かへ吹き飛ばしてしまったのを見て、

「こりゃあ雲よりも風の方が豪いかな」、と思って居ると、

その風が向うの方の壁へ突き当たって屁古垂(へこた)れてしまった。

「そいじゃあ()の壁が世界中で一番豪いのか」と思って見て居ると、

その壁へ穴を明けて一匹の鼠がチョロチョロと出て来た。

 「風を負かすような此の豪い壁へ穴を明ける(とこ)を見ると、

そいじゃあ矢っ張り鼠が一番豪いのかなあ」、と感心して、

とうとう娘を仲間の鼠の所へ嫁らせる事にした。

 ちょうきゅうな → まともな しっかりした

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