お天とう様とお月様と夕立様

 




 むかしお天とう様とお月様と夕立様と三人が揃って旅に出かけた。

所が生まれつき気の荒っぽい夕立様の事だもんで、行く先きで(あら)びまわって仕様がない。

 それでお天とう様もお月様も、夕立様と一しょに旅をするのがいやになった。

 そこで二人は内しょで相談をして、ある朝(あら)び草臥れて朝寝坊をして居る

夕立様を置き去りにして、黙って宿屋を立ってしまった。

 さんざ寝て()っと眼を醒ました夕立様は、お天とう様とお月様が見えんので、

ややけて支度をしながら、宿屋の亭主に、「二人のお連れはどうした」と聞くと、

亭主は「お天とう様もお月様も、もう先刻(さっき)にお立ちになりました」と云う。

 それを聞いて夕立様の云う事に、「成る程、月日の立つのは早いものだ」

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