ウントコの話

 

 
 
 昔ある所に物覚えの悪い小僧があった。

お母さんがその小僧にお団子を買いにやらっとしたが

途中で忘れるといかんと思って「歩きながら団子(だんご)団子団子

団子って云って行って、忘れん様に買って来いよ」と(おそ)えてやった。

 そいだもんで馬鹿の小僧は(おそ)えて(むら)った通り道々

「ダンゴダンゴ ダンゴダンゴ」って云いながら出かけて行った。

 だんだん行くうちに途中に溝川(みぞっかわ)があって、それを跳び越す拍子に

「ウントコ」って飛んだら、

それからは「ウントコ」になってしまって道々 「ウントコウントコ ウントコウントコショ」

ちゅって餅屋迄行って
「ウントコを売っとくなんしょ」と云った。

餅屋のお神さんは困ってしまって

「うちにはウントコなんちゅう物は無い」と云うと馬鹿な小僧は

「無い訳は無い、うちで買って来いと云ったんだで」

と理屈を言うもんで、餅屋のお神さんも困り返って

「馬鹿な奴には困っちまう」と独語(ひとりごと)を云ったら、

馬鹿は怒って傍にあった棒をとってお神さんの頭を力一杯ぶんなぐった。

「アア痛い痛い」とお神さんが頭を撫でて居ると、大きな瘤が出来たもんで、

「馬鹿にたたかれてお団子の様な瘤が出来た」と云った。

そうしたら馬鹿がそれを聞いて

「ウンその団子よ」って()っとこさ思い出して、

団子を売って貰って帰って来たって。


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