遠山奇談 補註

年比みのりを聞せられ給し霊場*1 眞宗大谷派本山東本願寺。
掛塚港*2  現、静岡縣磐田郡龍洋町掛塚、天龍川河口の港。 江戸時代から明治の中期へかけて、天龍材の積出港として栄えた。
明山*3  現、静岡縣天龍市五四〇m。
三方が原*4  現、静岡縣濱松市追分町の東方、甲斐の武田信玄と、徳川勢との古戦場。
秋葉山*5 静岡縣西部の周智郡と磐田郡と境するところの一峰、八三五m。現、周智郡春野町犬居。秋葉神社が祀られ、鎮火と防火に關する秋葉信仰がひろくゆきわたつている。
京丸の里*6  現、静岡縣周智郡春野町京丸、京丸山一四大九mの麓。
山住大權現*7 現、静岡縣磐田郡水窪町山住區山住、山住神社。
水久保村*8  現、静岡縣磐田郡水窪町水窪區小字水窪。
虎の子わたし*9 虎が三仔を生むと、一子は彪で他の仔を食うので、水を渡るときは苦心するという説話にもとづく、苦しい生活をやりくりするたとえ。
租師*10 眞宗の租師は親鸞上人。
釜*11 瀧壷をいう。
玉垂*12 玉のような形の杢目のでているもの。
木地挽*13 轆轤を用いて、盆や椀などの木地を挽く職業。
寝木*14 倒木。
槻の沈*15 槻の眞材。
羚羊*16  かもしか、にく、いわしかなどよぶ。偶蹄類ウシ科。亜高山帯から高山帯の岩山に棲む。
北山等持院*17 京都市上京區等持院北町にある臨済宗天龍寺派の寺。
岩鳥*18 雷鳥。キジ目ライチヨウ科の鳥、高山に棲む。
龍飼山*19 現、長野縣上伊那郡辰野町今村籠飼山香住寺 。
箒木*20 現、長野縣下伊那郡阿智村にある傳説。
須波の海*21 諏訪湖。
上の宮*22 諏訪神社上社。 
新屋村*23 現、長野縣南安曇郡穂高町有明新屋。
穂高組重柳むら*24 現、長野縣南安曇郡豊科町重柳。
しのだ妻*25 泉州信太村大字中にある森に、樟の大樹の下に白狐のすんだという洞窟があり、葛の葉の傳説で有名である。 ― 信太の森の白狐が女に化けて安部保名と結婚し、一子を設けたが、正體が知れて「こひしくばたづね来てみよ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」の歌を のこして、古巣に帰つたという話。
千國むら*26 現、長野縣北安曇郡小谷村千國。
みさ山祭*27  諏訪神社の八月二十七日の祭、俗に穂屋祭という。
三光*28  日月星。
佐久間郡*29 佐久郡(現、長野縣南佐久郡、北佐久郡)。
金峰といふ山*30 長野縣と山梨縣の縣境に聳える山、二五九五m、古来信仰の対象となり、頂に武蔵蔵王権現をまつる。
しゃむ*31 しやも、闘鶏。
戸隠大明神*32  現、長野縣上水内郡戸隠村戸隠神社。山嶽信仰に發し神佛の霊場であるが、 のち、修験道の道場となり、戸隠三千坊といわれ盛んであつた。幕末に三十六坊。明治の神佛分離で戸隠神社となつた。

(向山雅重)




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