後編序

 華あり。實あり、實をもて賞ずれば、又その花をたづぬとは、たれもこゝろあるべし。

花は枝枝にみちて、これかれと、えりとるに
ものうく、いづれの枝をか手折(たお)らん。

こは手のとゞくをもて、
手折はじむべしと。

 遠山にとなりし後の山々に、奇といふべきものある
を、手折あつめてその花を見せんと。

遠山奇談後編とはしにしるし
て、ながき日の興にそなふといふ。

                        享和と改まりし春の花見月  

                                花誘山人しるす

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