狼の話 2

収録者  伊藤 善夫 信越放送飯田支局長
話 者  森下 一男 収録日 昭和56年10月27日

聞いた話だが、やっぱあ昔は、狼のことを山の犬といっとったらしい。
狼は暗くなると馬小屋に忍び込んじゃあ、馬の足を食っちまうんで、村の衆は
どえらい恐れとったちゅう。

これは、わしが五、六つのころ、
実際(じっさえ)あった話だと、よく親父から聞かされたもんだ。
 ある夜さ、押出(おしで)のある家の人が、馬小屋の様子がおかしいんで、
そおっと
(そとう)見ると、せえたら、狼の奴めがだいじな馬あ食い始めとる。

こんなこともあるかと、用意はしとったんで、村の衆が竹やりを持って、大勢集まってきた。

そん中で、ある気の
(つえ)え人が、その竹やりで狼めをグサッと突き刺したそうだ。
へえだが、勢いがあったもんで、狼の体あ突き抜けて、向うの石垣にくすがって
()まったちゅう。
 こりゃあ、うそじゃねえ、
本当(ふんと)の話だ。

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