(1)由 来
鎌倉時代の承久元年(一二一九)、遠山谷の尾の島に諏訪社を創建された頃、
神を崇敬する当地の先人が鎌倉にのぼり、湯立神楽(ゆたてかぐら)を遠山地方に
伝えたという説と、伊勢神楽の一部を伝承したという説があり、はっきりしたことは
不明です。
その後、遠山氏の祖霊をまつる儀式が加えられ、遠山谷の人びとの再生行事の祭りと
して行なわれています。
再生行事とは、人間が働きつきて力がおとろえているとき、生きる魂を蘇らせるため、
神霊の力をいただくという行事です。
これは、火の神様によって水の神様からいただく清い水を沸かし、大八州(おおやしま 日本国の古称)
の八百万(やおよろず 日本国中)の神様を招いて、沸かした湯を神様たちに差しあげ、祭りに参加した
人びとにも、「水の王」が湯を浴びせて、活力を与えるということが主体となっています。
と同時に、この祭りは、時代の流れに従って、過ぎゆく年に感謝と、明ける年の祈願、五穀豊穣、
災難厄除け、建国祈願、養蚕や焼畑農耕、川を利用しての川運など産業増産、戦時中には戦勝、武運長久、
戦後は慰安歓楽、文化伝承、芸能保護、観光体験など、祈願内容は若干変わっていますが、祭りの儀式は、
先人が残したそのままの姿を、まもり続けています。
(昭和五十四年(一九七九)、文化庁の重要無形民俗文化財に指定されました。)
湯の式
(2)霜月祭りの次第へ