(14)面

  湯を清め、湯飾りにいる大八州
(おおやしま)の八百万(やおよろず)の神々に湯を差しあげる祭事が
 行なわれます。この祭事の中で、「火ぶせ」「湯ぶせ」を行ないます。
 これらの呪文は、「天さらさらと湧きくるお湯は、中の清水でおしふせる」
 「水は兵、氷は途中の清し水、水性免ず」と、いずれも三度くりかえします。
 一番先に、水の王様の面が出てきます。

          水の王の面

 水をつかさどる神、岡象女神
(みずはめのかみ)が湯を鎮めてから、参加した人びとに湯を差しあげます。
 湯を鎮めた釜の湯に手を入れて、左右々々と湯をはねて、人びとに湯を差しあげてから、神殿に戻ります。
 次に、火の王様の面が出てきます。
 水の王が鎮めた湯を、再び甦らせるため、火をつかさどる神、加具土神
(かぐつちがみ)が登場し
神様が無事に通れるため、道を開けてくれます。これがすむと神殿に戻ります。

  火の王様が神殿に戻ると、一番先に祭社(例、諏訪社の場合は建御名方神)の面が出、つづいて、
各社の神様の面が出て来ます。
これらの面が神殿に戻りますと、ジイサ、バーサ(爺さん、婆さん)の面が出てきます。

       バーサの面

 ジイサは猿田彦之神(
さるたひこのかみ)、バーサは天宇受之神(あめのうずめのかみ)の各神様です。
 猿田彦之神は、瓊瓊杵之尊
(ににぎのみこと)が、降臨(天から地におりたった)した時、
道案内をした神様です。
遠山地方では、百姓の神として、庚申(
こうしん)の日に、この神を祀っています。
 天宇受之神は、天岩戸
(あまのいわと)の前で、天照大神を慰め、おどったという神様で、
猿田彦之神を和らげて道案内をさせたという、神代の時代では美人だったと言われていて、遠山地方では、
福の神として崇められています。
 祭りの場面は、ジイサとバーサが、前から打ち合わせをして、お伊勢参りに行くことになっていた。
二人は、神社前を通りかかると、そのにぎやかな祭りにジイサは気をとられてしまいます。
 その祭りをとり仕切っていた権太夫(
ごんだゆう 権=正式の資格のある人員からはみ出した人につけた官職)
が来て、ジイサを見ます。
バーサが待っていることに気がついたジイサは、急ごうとすると、権太夫に咎められ、道を通りたい、
道を通させないの押問答になってしまいます。
ジイサは権太夫の言うことを聞き、祭りに免じて通してもらい、バーサと出会い、二人は伊勢参りに行くことが
出来ました。
この喜びで、祭りに来ている人たちも、二人が伊勢参りに行くのを送り出すという場面が演じられます。
 次に、猿楽の面が登場します。ジイサ、バーサを伊勢に送り出したあと、今日に限って、
神の使いとなる猿が、神々に代って祝舞をします。
「アーめでたいな、めでたいな」と猿が言って舞うと、参加した人たちは、「ヨイショ、ヨイショ」と
力をかしての舞です。
 この時、神様と参加した人の心が、ひとつになります。
 この舞が終わると、来てくれた神様に、帰ってもらう舞に移ります。

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