F御柱と神幸行列

 御柱祭りは、慣例によって四月に行なわれます。
寅の年の場合は寅の日、申の年の場合は申の日、いずれも二回目の寅か申の日に行ないます。
 当日は、夜あけと同時に祝砲が遠山谷にひびきます。
早朝、神幸行列の役につく人たちは諏訪社に集合します。
 清め祓い式を終え、神殿から御神体が御神輿に移され、役につく人は、
それぞれの祭具を持って、御柱献木の家に行きます。
 その家では、諏訪社の御神体を上座(じょうざ)に迎え入れます。
そして、親族、氏子の家運隆盛を含め、御柱が諏訪社に無事建立する祈願神事が行なわれます。

この時、木遣り歌がうたわれます。

この時の木遣り歌

 おめでたや おめでたや
 諏訪湖畔に鎮まる諏訪神社
 信濃の國の一の宮
 建御名方御命
(たてなかたおんみこと)
 御柱祭の御由来は 昔々のその昔
 桓武天皇
(かんむてんのう)の御時(おんとき)
 東北蝦夷が乱を成し 國の乱れを治めんと
 坂上田村麿
(さかのうえたむらまろ)と言う方が
 征夷大将軍に任ぜられ 蝦夷征伐に行く途中
 明神様に願をかけて めでたく國を治めたり
 その神恩に報いんと 平和と繁栄念じつつ
 全国各地に社
(やしろ)建て 明神様を祀り込む
 幾世か過ぎて 略されて
 社の隅に柱建て 申寅歳
(さるとらどし)に祀ると云う
 伝え伝えて今日までも 七年一度の御柱
 平成○○年の○歳は 遠山谷の名門で
 南信濃は○○○○の
 ○○さんの御献木
 数ある中の大木を あまたの杣(そま)が集まりて
 七間三尺に切り上げ 
 今日の佳き日に 恵まれて
 氏子一同のお力と 梃方
(てこがた)衆の介添えで
 怪我過ちのない様に 明神様へと曳き付けて
 力合わせて押し建てりゃ 
 明神様もおよろこび ○○さんもおよろこび
 氏子一同およろこび
 ヨイヨイナラバ お願いします


 ○御柱式年祭神幸行列の順序

順番 役    名 人数
1 先導役
2 神社名籏
3 国 旗
4  弓
5  槍
6 薙 刀(なぎなた)
7  刀
8 前 籏
9 大 榊(おおさかき)
10 三種の神器
11 宝 舟
12 若 党
13 世話役
14 氏子総代
15 神 職
16 御神輿(おみこし)
17 神 職
18 台傘役(だいかさやく
19 村代表
20 大 榊
21 五色籏
22 祭式係
23 社務所
24 御柱音頭
25 御柱建立委員
26 御柱縄解き
27 杣 職(そましょく)
28 梃子係(てこがかり)


 神事を終えると、御神輿を中心に、神幸行列は、御柱安置所に向って行進を始めます。
安置所に到着すると、御柱が無事に諏訪社に運ばれて建立できるための祈願神事が行なわれます。
 神事が終ると,金、銀の采配を持った音頭とりが御柱にのぼり、金は進行方向の前方、
銀は後方に立って、木遣り歌をうたいます。

この時の木遣り歌

 七年一度の御柱
 今日のめでたいお祭りも
 町内有志の方々の 心づくしのお祝いに
 今お祭りも最高潮 人で埋まる和田の町
 産生様
(うぶすまさま)の諏訪神社
 守り続けていつまでも 尽きぬ名残りの御柱を
 和田の町内の繁栄は この御柱
(みはしら)を曳き付けて
 明神様に押し建てりゃ 明神様もニッコニッコ
 力合わせて曳いとくれ 明神様までヤットクレ

 伝統輝く御柱
 ここにこの木を置いたなら 明神様がお腹立ち
 明神様の祭神は 建御名方の命にて
 戦に強い守り神 後へ曳くこと嫌う神
 明神様のよろこびを 願うが氏子のつとめなら
 力そろえて一息に 和田の町をば曳き抜かん
 力そろえて ヤットクレ

 この木遣り歌が終わると、御柱は、御神輿を中心とした神幸行列とともに曳き出されます。
 道中の数ヵ所に御休み所が設けられていて、そこでは、最寄りの氏子たちの繁盛安全祈願が
行なわれ、振舞い酒が用意されています。
 その間、神幸行列のなかにある宝舟は、氏子宅、諏訪様を待つ人びとを廻って寄進を受けます。
 御柱は、献木者の家に進行します。
 この家で,大盤振舞を受けてから、神幸行列は御柱とともに、諏訪社に向かって出発します。
 
(この家でも木遣り歌がうたわれますが、省略します)

 「ヨイショ、ヨショ」のかけ声は、度重なる振舞酒も加わって最高潮となります。
諏訪社に到着すると、御神体のご殿入り式が行なわれ、木遣り歌がうたわれます。

この時の木遣り歌

 おめでたや、おめでたや
 七年一度の御柱
 ○○さんが献木の この御柱
(みはしら)がつつがなく
 氏子の皆さんのお力で めでたく社前に曳き付けた
 おめでたや、 おめでたい
 氏子一同の健康と災難少なく幸多く
 五穀豊穣で村内の 平和と安全祈りつつ
 力合わせて押し建てりゃ 明神様がおよろこび
 ○○さんもおよろこび
 さぞや疲れた事でしょうが 力合わせて建ててくれ

      めでたく御柱が建ちはじめられる。

 式が終わりますと、御柱建立式をして建てはじめます。
 多くの群集に見守られて御柱が天を仰いだとき、神が居座る御幣と曳綱をとりはずす場面は、
この祭りの最後を飾るにふさわしい圧巻(もっとも、すぐれている部分)です。


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