き つ ね 火

昔 昔々、ある部落の山の中に二人の兄弟がすんでいた。
その二人は炭焼きをしてくらしていた。
兄弟は仲がよく、村のものがほめたてるくらいで、村人たちもこの兄弟を知らない人はめったにいなかった。
その理由は、仲はいいが、弟はやさしくだれよりもすかれており、兄はその逆の性格であり、村人たちとの
つきあいもなく、みんなのきらわれ者であったからだ。

 ある日、兄が村におのを買いに行った。
村につくと、今度大金持ちがこしてくるそうで、なんだか家を建てる木材で、細かいのはそろったが、
大事な大こく柱がまだないといっとった。
それでいい大こく柱をさがした者には、ほうびをくれるといっとった。
などと、村人たちが話した。
兄はその話を村人たちにようっく聞いておのを買い、走って弟がいる所までいった。
兄は弟に、村人たちが話していたことを、聞いたとおりに話した。

二人はさっそく山の中に大こく柱をさがしにいった。
木はまったく太いのはなく、細いのしかなかった。
しばらくして弟は兄に、もうくらくなったので帰ろうといった。
兄はまだだいじょうぶだといってさがしまわっていた。

 辺りは暗くなり兄は帰れなくなった。
兄はしゃがんで夜明けをまとうとした。
するとむこうのほうに火がみえてきた。
その火は狐がばけていたものだった。
きつねは、子ぎつねをたすけてもらおうとして、火に化けてつれていく所だった。
きつねは兄をばかしてつれていった。

 兄はついていく途中、木にとまっているふくろうに道から石をひろってなげたり、動物がねている
のに木の枝をとってふりまわしながらいった。
火に化けていたきつねは、この人間では、子ぎつねを助けてもらえないと思い、山のおくへおくへと
つれていった。

辺りが明るくなり朝がちかづいてくると、火はしらずしらずに消えていった。
兄は、火はどこへいったんだろうと思ってきょろきょろと辺りを見回していた。
 すると下の方から兄をさがしにきた弟がやってきた。
弟はひたいに汗をかき、ひっしになってさがしているようだった。
きつねはこの弟を見て、この人なら助けてくれるだろうと考えた。

 きつねは弟が仕事でおそくなるのを待って、こんども火に化けた。
弟は火が見えたので、ついていけば家の方におりていけると考え、ついていった。
きつねは、朝がちかづいてくるのがわかって急ぎだした。

早くいかなくてはいけないということだけが頭にあって、きつねはもとのすがたにもどっていた。
だがきつねは、それに気がつかなかった。

弟はきつねが火に化けていたのに気がついた。
弟はたちどまり、帰ろうとしたが、きつねがひっしになって自分をつれていこうとしているのを見ると、
きつねについていった。

 しばらく歩くと、子ぎつねの足が木と木の問にはさまっているのが見えた。
子ぎつねのまわりには、子ぎつねがぬけだそうとしてできたつめのあとや、親ぎつねが子ぎつねにあた
えていた食べ物のかすが残っていた。
 弟は子ぎつねを助けてやった。
子ぎつねと親ぎつねは弟の回りを走り回った。
弟はやっばりついてきてよかったと心の中で思った。

 その時、木の枝の間から朝日がいっそうまぶしく見え、しばらくの間、黄金の山のように感じた。
ちょっとして親ぎつねと子ぎつねは感謝して山の中に入っていった。

そしてその次の日、
弟はいつものように、木をたおしながら、ついでに大こく柱をさがして仕事をしていた。
するとその場に親ぎつねがあらわれ、弟をつれていった。
弟はきつねについていくと、そこに大きな木があった。
 その木は大こく柱になるような木だった。
弟はきつねにお礼をいおうとしたが、もうきつねはいなかった。
弟はさっそく兄の所にいき、大きな木をきるのを手伝ってもらうために呼びにいった。

 兄と弟は、その木を金持ちの家に持っていき、売った。
金持ちは、とてもいい木だといって倍のお金をくれた。
 
そして、一人でくらしている母にしおくりときものをおくってやった。


 きつねの結婚