七  つ 釜

 むかし昔、梶谷という部落に七人の子と母親が、みんななかよくやっとった。
ある日母親は、子供たちにるすばんをさせて山へ、たらのめとりに出かけた。
「それじゃあ行ってくるで、なかよくしとれよ。」

母親は、毎年たらのめがたくさんある所へ行ったんだが、なぜかその日にかぎってなかった。
そこで、もう少しおくの山へと行った。
もう昼ちかかった。

 母親はのどがかわいたので、下の川へおりた。
そのそばには大きなふちがあった。
部落の人たちは大釜とよんでいる。
母親はそこで水をのみ、また山へのぼって行こうとした時
………水がゴーォッとあがったとたん、龍がでてきた。
むかしから、その大釜に近づくとさらわれると
いうつたえがあった。

 七人の子の母親は、その龍につれていかれてしまった。
 そして、あまり母の帰りがおそいので子供たちはしんぱいだった。
「なあー、おかあちゃおそいな。」 
「おれ、はらへったわー。」

「うー。」
それにしてもおそいんで、

「よし、おれがむかえに行ってくる。」
一番上の兄が言った。
「俺も。」 
「俺も。」

 そこでみんなで母をさがしに出かけた。
そして山へ行ってみると、母のかごが大釜のそばにあった。
これはきっと、ここの龍にさらわれたんだと思った。
それは、ねぎさまのおじいさが言うことといっしょだった。

 そしてあくる日、母をたすけに出かけた。
が、

「おい、みんな龍は大きいでただではかてんし、そこで龍のひげをとろう。」と考えた。
そしてみんな大釜へついた。

「おい龍よ、大釜の龍よ、でてきておれたちのおかあちゃをかえせ。」
と一番上の兄がいった。
すると龍が、ゴオーッとでて、龍は

「おまえらみたいなちびに負けん。」といった。
そこで上の兄は、

「よし、それならおまえのひげをとってやる。そうしたらおれたちのかちだ。そしておかあちゃをかえせ。」「おまえらみたいなちびには負けんわ。」
と龍が言い返し、そこで七人の子と龍が戦いはじめた。
七人の子は負けんかった。
龍も負けんかった。
みんな汗をたらしてがんばったんだに、龍はどうしたことか、上へ上へとにげていく。

「まて!!」と、子供たちがおいかけていった。
龍のせなかにのった子供たちは、龍のひげのところまできたが、ひげがなかなかきれんし、龍があばれるので
なかなかとれん!!

三番目の兄がひげにとびつきひっぱった。
その時「ぶち」とひげが切れた。
龍はたいへんいたがり、そこらじゅうをあばれまわったんだ。

そしたら、となりにあった川が流れをかえた。
龍はこんどは下へにげたんだよ。
どすんどすんと、ものすごい音だった。
流れをかえた川は龍のあとをおいかけるように流れた。
龍のにげて行ったあとには、あまり大きくない穴が七つあいた。
そこを七つ釜とよんだ。

 龍をたおした子供たちは、母親をたすけて七つ釜をみていた。
龍はもとの大釜へもどっていった。
龍はもう人をさらわんくなった。

 七人の子の母親が帰る時
「あの龍こわかったか、おかあちゃ。」
「いや、こわくなかったよ。」
「ふーん。」 と、こんなふうに帰ったに。
ある、むかし昔のできごとだったんだよ。

七つ釜は梶谷のおくに行くとあるぞ、大釜もあるに。

 ほおずきのなる頃