しんのすけとかわらんべえ

 「助けてー。」
空はどんよりと雨雲をよび、雨が降ってきた。

今日で、二人の子どもが、かわらんべえにさらわれた。
村は静けさをまし、外に出て遊ぶ子供は一人もいない。
村人たちは
「今日で二人の子がさらわれたなあ。」 

「ううん、なんかええ方法はないかのう。」
「そうだ、子供を外にだすのをやめさせよう。」
 しかし、村一番のいたずら小僧のよすけは、外へ出れないものだから、
「おれはかわらんべえをやっつけてやる。」
といって、兄の言うことも聞かず、出ていってしまった。
二、三日たったが、よすけの姿はどこにも見えなかった。
兄しんのすけは、
「よせっていったのによさないから、かわらんべえにつれていかれるんだ。」
とくやしそうにいったのだ。

「今度はおれが、弟を助けに行ってやる。」
と兄しんのすけは堅く決意して、かわらんべえに戦いをいどんだのだ。
が、このかわらんべえ、とてつもない力をもっているのだから、兄しんのすけの力じゃかなうわけがない。

「このやろう、弟をかえせ。」 
「おまえも、弟の所につれていって、あとでじっくり食べてやる。」
「子どもの心ぞうはうまいでのう。」 
そこで、しんのすけ、知恵を使って、
「いかん。心ぞうは、うちにおいてきたんだ。おれの心ぞうは食べれんぞ。」
といったのだ。

「それじゃ、今回だけはみのがしてやる。今度の時は、心ぞうをもってこいよ。」
といってにがしたのだ。
しんのすけは、どうにかかしこい知恵を使って

「ざまあみろ、今度あう時は必ず勝ってやる。」
といって、ひとまず家に帰ったのだ。

 そして、村一番の年寄りのおばあさんに、かわらんべえのい場所をきいたが、
「わしゃー長い間この村におるが、わしにはかわらんべえのい場所はわからん。そうだ、山の頂上にすんでいる
神様なら、きっとかわらんべえのい場所わかるだろう。」

とおばあさんにいわれ、
「よっしゃ、おれは山の頂上にすんでいる神様に聞いてくるんだ。」
といって、頂上に向かって出発した。
雨が降ろうが、風がビュービューうな
ろうが、しんのすけは頂上目ざしてがんばった。
頂上にのぼりきると

「わあーすげえー。」
としんのすけは、目をみはらせたのだ。
よくみると、大きな門があって、その門が、開きだしたのだ。

「だれだ、そこにいるのは。」 
「しんのすけという者でございます。実は、かわらんべえに、弟をさらわれてしまったのです。どうかぼくに、か
わらんべえのい場所を教えてください。」 
「うんそうだのう。教えてやるのはわけないが、どうやって戦うのだ。」

 しんのすけは困ったような顔をした。
「かわらんべえの弱点を教えてやろう。かわらんべえは、神様にそなえてあるお茶をのんで行くと弱いのだ。いいか
しんのすけ、りっぱに戦って、かわらんべえを退治するのだ。」 

「はい、わかりました。」
しんのすけは、神様に知恵をさずかって、頂上から村に降りたのであった。
しんのすけは、
「前には負けたが、かわらんべえめ、今度は勝って、必ず弟を取りもどしてやる。」
と、村に帰って来た。
村人たちは、
しんのすけに神様にそなえてあるお茶をのませてやった。
そして、かわらんべえのい場所に向かって歩きだした。

「やい、かわらんべえめ出てこい。前には負けたが、今度はたおしてやる。」 
「なに、おれをたおすだと。たおせるものならたおしてみろ。そしたら、お前の弟を返してやる。」
と、かわらんべえは、大口をたたいた。
「おれは、神様にそなえてあるお茶をのんできたんだぞ。」 
「なに、それはほんとか。」
といかにも、大口をたたいていたかわらんべえが驚いた。
「いくぞ、かわらんべえ。」 
といって、かわらんべえにぶっつかった。
前よりも、ふたりの力は同じくらいになっていた。
そのうち、しんのすけが、

「えい、このやろう。」
と飛ばしたとたんに、かわらんべえは、ふっ飛んでしまった。
かわらんべえは、おきあがり、しんのすけの前に正座して、

「どうも、わるかった。おまえには負けた。おまえの言うことならなんでも聞くからゆるしてくれ。」

と、かわらんべえはしんのすけにたのんだ。
「では、さらった子供を全員帰すのだ。そしておまえは、この村から去ってどこかに行くのだ。」
かわらんべえは、子供をしんのすけの前につれてきて、どこともなく去っていった。
しんのすけの弟よすけは、しんのすけの前にきて
「おにいちゃん、ありがとう。」
と泣いた。

 村人たちもかけつけ、この村には、またにぎやかさがもどり、空は青空をみせ、弟よすけは、野原を
かけまわりだしたとさ。

 太郎の鬼退治