天狗 の 罰

 ある山奥に、とっても子供が好きな天狗がおった。
いつも一番高い木の上にのぼって、村で元気で遊ぶ子供達を見ちゃあ(わしもあの供らと、一緒に遊びてえなあ)
と思っておった。
だけど、鼻のながーい天狗は、とってもおっかねえもんだと子供達は思っとったんな。

 そんなある日のこと。いつものように、木の上にのぼって子供達の遊んでおるのを見ていると、下の方で女の
子の泣き声が聞こえてきたたんな。
あわてておりて行くと、一人の女の子がおった。

 天狗は、こんな山奥になんで子供がおるんじゃろう、と思っておっかながられるのは百も承知で、ゆっくりゆっ
くり近寄ってみたんな。
だけど、その女
の子はおっかながりもせん。

「どうしたんな。」
天狗はやさしく聞いてみた。
その女の子のゆうにゃあどんぐりをひろいに来とって、帰る道がわからんようになったっつうことだった。
 天狗は、その子が自分をおっかながらなんだもんで、かわいくてかわいくてしょうがない。
「そんなに泣かんでもあんじゃあない、わしがあした連れてってやる。」っつってなぐさめて、自分のうちへ連れ
ていったんな。

 次の日。
きのうは、ああやってゆったけど、どうしても返したくない。
ほいだもんで、帰りたいって言わせんためにも、いっぱいおもしいことをして遊んだんな。
女の子も、天狗にすっかりなついたもんで帰りたいって言わなんだ。

 だけど村じゃあ、長者の一人娘がおらんくなったもんで大さわぎしとったんな。
村の衆は、「こりゃあ、きっと山に住んどる天狗のしわざだ。」

って口々に言っておった。
そいで村の衆が長者のうちに集まって、天狗退治の計画を立てたんな。

たくさん話し合ったけどいい知恵が浮かばなんだ。
だけど最後にゃあ、みんな一本ずつ棒を持ってって、天狗をなぐり殺すっつうことに決まったんな。

 次の日、その計画通りやることになった。
村の衆、二十人位集まって山へのぼったんな。みんな、一本ずつ棒を持ってってな。
二時間位歩くと、小さい女の子のキャーキャーとはしゃぐ声と、男のふとーい声が聞こえてきたんな。
村の衆はそれぞれ、岩や木の後ろにそっとかくれて、少し様子を見とったんな。
そうして、天狗が後ろを向いた時「それ!」っつって天狗におそいかかって、用意してきた棒でなぐりまくったん
な。女の子は泣きわめいてなあ。
 天狗は痛かったけど、声を出すひまもなく、なぐり殺されちまったんだ。
痛かったろうよ。

 それからはこの村じゃあ、日照りが続いて農作物もできんもんで、村の衆は苦しんでなあ。
こりゃあきっと、なぐり殺しちまった天狗の罰だっつって墓を作ってなぁ。
そうして毎日毎日お祈りしたんだっつうことだに。

 遠山様の死霊祭り