山姥と親子

それじぁ、わしのしっとる話をきいてもらうか。
この池口にな一昔、心のくさった、りょうしがおって。
 ある時、ググーとはらのへった、りょうしは、山にえものを取りに出かけたんだ。
ちょうど、山道の中ほどまで行った時だった。
なんか、冬の、矢のようにいたく、冷たい風の中をあかんぼうの声が一つ。
りょうしは(なんだぁー)と思い、近くへいって見た。そして、家につれて帰っていった。

 つれて行ったのはいいが、(これはオレの子じゃあねえで)と思って、すき間だらけの馬ごやに、わらをしいて、
そこに、ポイッとほうりこんだ。
自分はと言うと、ぬくぬくとした、部屋でねとった。

 十二年の時がすぎれば、むすこも、りっぱな青年。
それをいいことに、りょうしは、「おーいめし。」 「お−いせんたく。」 「おーい……。」と、いうありさま
だった。特にひどいのは、自分のうでだめし、りょうじゅうのまとにして、子どもの両手にかきをもたせて、それ
をうった。時々、うちそこなって、子供のかたに、ブスッ、ブスッ、とささった。
しかし、なんの手あてもやらんかった。

 でも、子供は、けっして、「あいつめー。」なんて、思わんかった。
自分をひろってくれたんだからだ。

 ある冬の風の強くふく日。えものにありつけない猟師は、山ふかく入っていった。 
ちょうど……池口岳のふもとまで行った時だった。
 
あたりは真っ暗、風は、ゴォーゴォーと、そいて。しようがないの
で、りょうしは、とまることにした。
が、こんな所に、家があるわけ
がないしーっと、思っていると、一人のろうばがおって。
「もし、お
こまりじゃろう、私の家におとまりなされ」
と言って、りょうしをと
めた。
「外はお寒かろう、さあ、もっといろりのそばに」と、りょうしを
まねいた。
 りょうしも、あんしんして、
「やあっ今日はちっとも、えものにあ
りつけん]
と、りょうしと、ろうばの話がはずんでいた。
そして、

「このへんに山んばが……」
っと言ったとたん、ろうばの目が光り、
みるみる、口がさけきばがはえてきた。
そして、髪がのびてきてりょ
うしの目の前まできた。

 この事を見ていた、青年は、りょうしに飛びかかり、しりぞけ、身がわりとなって、死んだ。
一瞬の出来事だった。
 にげてにげて、にげまくり、家についたりょうしは、自分のみじめさに気づくと、悲しくなり「…………」と、
小さながらも、なきだした。

 そして、自分の家の、うめの木の下に、あつく、ほうむり、毎日、いのっているということだ!!
その人はこんな事を言っとった。「今は秋!山の紅葉も、今が真さい中。でも、みんなの目を楽しませる、紅葉
も私には、美くしくは見えん…。」
 「ふっ、また冬がくる。悲しみ、くるしみの冬がくるな〜。」

「いやだ!!‥いやだ!!」 っと、

 この話をきいていると、なんだか、おじさんが、自分のことを話しているみたいで、かなしくなった。
もし、自分がこんな目にあったら、いやだな
!!

 山姥と焼きめし