『小宮と滝沢』 3 入学式から一週間。 だんだんわかってきた。 時間割。 校内地図。 カラーペン。 シャーペンの芯。 ティッシュ。 ハンカチ。 滝沢はかなり几帳面。 いや、違う。 なにかを恐れている。 そんなかんじ。 「滝沢、消しゴム2個ない?」 「あるよ」 いつも滝沢が使ってるのをくれる。 滝沢は予備のちびゴムを使う。 「そっちでいいよ」 「え、いいよ別に」 「フツー逆でしょ」 「消しゴムなんて消せればいいんだよ」 「だからだよ」 「‥‥小宮って律儀だよね」 どっちが。 律儀なんて言われたのは初めてだ。 滝沢は、 「滝沢は、けっこう頑固だよ」 口に出してからハッとした。 そんなことを言うのは、 「ええ〜、そうかなぁ」 言ってしまうのは、何年ぶりだろう。 言ってしまえたのは、どうしてだろう。 「‥‥そうだよ」 握りしめた手のひらを隠すように、チャイムが鳴った。 ●← 3 →● TOP |