『小宮と滝沢』










入学式から一週間。
だんだんわかってきた。

時間割。
校内地図。

カラーペン。
シャーペンの芯。

ティッシュ。
ハンカチ。

滝沢はかなり几帳面。

いや、違う。

なにかを恐れている。
そんなかんじ。


「滝沢、消しゴム2個ない?」
「あるよ」

いつも滝沢が使ってるのをくれる。
滝沢は予備のちびゴムを使う。

「そっちでいいよ」
「え、いいよ別に」
「フツー逆でしょ」
「消しゴムなんて消せればいいんだよ」
「だからだよ」
「‥‥小宮って律儀だよね」

どっちが。

律儀なんて言われたのは初めてだ。
滝沢は、

「滝沢は、けっこう頑固だよ」

口に出してからハッとした。

そんなことを言うのは、

「ええ〜、そうかなぁ」

言ってしまうのは、何年ぶりだろう。
言ってしまえたのは、どうしてだろう。


「‥‥そうだよ」


握りしめた手のひらを隠すように、チャイムが鳴った。






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